口腔衛生学会雑誌
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原著
視診のみによる臨床診断と病理学的診断の比較研究 : 要観察歯(CO)について
水谷 博幸廣瀬 公治三浦 宏子上田 五男
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2000 年 50 巻 2 号 p. 165-171

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抄録

学校歯科健診において,平成7年度より要観察歯(CO)が導入された。これは,放置しておけば齲蝕歯に移行する要観察歯である。しかしながら,健全な状態や齲蝕状態の両者と,健全歯扱いであるCOの特性との違いがいかなるものであるかを歯科医師間で診断が異なることが見受けられる。そこでわれわれは,健全歯扱いのCOを各歯科医師がどの程度理解し,判断しているかを知るために本研究を実施した。抜去臼歯16本を植立した歯模型を作製し,小窩裂溝齲蝕診査を95名の歯科医師に約2分の学校歯科健診の要領で視診のみで実施させた。それによれば,16本の歯に対して一人平均のCO数は3.37本であった。1名がCO数を12本と診断したが,これに反して12名の者がCO数は0本とし,健全歯あるいは齲蝕歯に16本を診断した。その後に,被験歯の連続切片を作製し顕微鏡下において実質欠損の有無を調べた。「齲窩形成なしで変化あり」であるCOが,顕微鏡下で判断できたものは3本であり,実質欠損のある齲蝕歯と判定したものは5本であった。このように,歯科健診におけるCOの判定は,診査者間において大きな差異をもつことが示された。よってCOの診断の検出には,相当な注意が必要であることが示されたと同時に,公式の保健統計に大きな影響を与えることが示唆された。

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© 2000 一般社団法人 口腔衛生学会
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