要介護高齢者の口腔の状態は多く報告されているが,残根歯の状況に関してはほとんど報告はない.そこで,高齢入院患者の有する残根歯の現状と年次推移について調査した.
対象は65歳以上の入院患者で,5つの期間(2013~2021年の隔年上半期)の歯科衛生士による口腔衛生管理の受療者とした.歯科診療録から現在歯および残根歯に関する情報を収集し,平均現在歯数,1歯以上の残根歯を有する者の割合,1歯以上の残根歯を有する者(以下,残根歯保有者)1人あたりの平均残根歯数,残根歯の部位別・歯種別割合,残根歯の未処置率を算出し,5期間の群間比較を実施した.
全対象は787例であった.平均現在歯数は13.2±10.1本,残根歯保有者は787例中315例,40.0%であり,残根歯保有者1人あたりの平均残根歯数は4.0±3.6本であった.残根歯の部位は上顎が下顎より多く,歯種は切歯が最も多く,大臼歯が最も少なかった.残根歯未処置率は97.9%で,ほとんどが未処置であった.1残根歯保有者の割合は5つの期間に有意差は認められず,顕著な年次推移は認められなかった.
高齢入院患者は残根歯を多く有しており,残根歯未処置率も高かった.高齢入院患者の口腔内環境改善のためには,残根歯の処置も含めた口腔健康管理が必要である.
1歳6か月児歯科健康診査では,う蝕なしの者をう蝕リスクの低いO1型とう蝕リスクの高いO2型に分類し,リスクに応じた保健指導を行うことが定められている.本研究では,全国87保健所設置市を対象とした質問紙調査を行うことにより,O1型/O2型の判定に用いるう蝕リスク指標および判定基準の現状と見直し状況,課題を見出すことを目的とした.回答の得られた63保健所の情報を集計した結果,「歯の汚れ」「おやつ(甘味飲料含む)」「哺乳」を危険因子としている保健所が全体の7割以上を占めた.「おやつ」や「哺乳」は頻度や時間帯,内容等の条件を細かく設定している保健所が多く,これまでに判定基準を見直している保健所も多かった.近年は保育時間が長くなり保育所でのおやつを含めた評価が難しい現状も窺えた.またフッ素ジェル等の利用が増えてきたこと,子ども用飲料の質や量の変化,子育ての考え方やアイテムなど時代の変化に対応する必要性を示唆するコメントがみられた.さらに保護者の意識や知識,健康行動などの格差に着目する必要性を示唆するコメントもあった.課題としては,「判定基準が統一されていないため自治体間での比較が難しい」という主旨の意見が最も多かった.これらのことから判定基準については,「地域性」「時代性」を考慮して見直すだけでなく,自治体間で比較できる「標準的指標」が求められているのではないかと考えた.