口腔衛生学会雑誌
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最新号
令和2年7月
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 渡辺 俊吾, 岩永 賢二郎, 百々 美奈, 石河 理紗, 飯嶋 若菜, 加藤 翼, 丹田 奈緒子, 相田 潤, 小関 健由
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 70 巻 3 号 p. 129-135
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

     糖尿病は歯周疾患との間で双方向の関連性があることが古くから示唆されている.本研究では歯周炎の重症度を考慮した歯周疾患と糖尿病の関連性を調査することを目的とする.宮城県北部の農村地帯の住民健診における4年間の横断研究にて,糖尿病の指標であるHbA1cと歯周炎歯数および喪失歯数の間の関係を重回帰分析で解析した.分析で使用する項目は,従属変数であるHbA1cに対して,統制変数が年齢,性別,BMI,収縮期血圧,拡張期血圧,喫煙習慣,1年以内の定期歯科受診の有無,刺激唾液量の8項目,独立変数が歯石付着非歯周炎歯数,中等度歯周炎歯数(歯周ポケット深さ(PPD)4〜5 mm),重度歯周炎歯数(PPD 6 mm 以上),第三大臼歯を含む喪失歯数の4項目とした.対象となった302名の単変量解析の結果では,HbA1cに対して有意な関連性が認められたのは,歯石付着非歯周炎歯数,中等度歯周炎歯数,重度歯周炎歯数であり,いずれも正の関連性であった.多変量解析の結果では,HbA1cに対して,有意な正の関連性が認められたのは歯石付着非歯周炎歯数,重度歯周炎歯数であり,有意な負の関連性が認められたのは喪失歯数であった.本研究より,PPD 6 mm 以上の状態が糖尿病と関連性が強いことや,口腔内における糖尿病の増悪因子と寛解因子の両方が示唆された.今後は医科歯科連携をより強化し,歯科において歯石除去や重度歯周炎を有する歯への対応を見据えた歯周病治療を行うことが糖尿病治療において欠かせない視点となると考えられた.

  • 富永 一道, 土﨑 しのぶ, 濱野 強, 安藤 雄一
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 70 巻 3 号 p. 136-143
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

     適切な食行動が生活習慣病の予防や治療において効果的な取り組みであることは良く知られている.しかしながら,食行動と強く関連する食嗜好と口腔機能の関係については味覚を除いて十分に解明されてはいない.そこで,本研究では,「食嗜好の変化(食べ物の好みの変化)」の有無とその関連要因について検討することを目的とした.

     島根県邑南町で実施した平成29年度特定健診および歯科健康調査の参加者656名のうち,前期高齢者484名(男性 44.2%, 女性 55.8%)を分析対象とした.

     その結果「食嗜好の変化」ありと回答した者は129名(26.7%)であった.また,「食嗜好の変化」の有無を目的変数としたロジスティック回帰分析モデルに,各群を順次強制投入したときの擬似決定係数の変化から「食嗜好の変化」に対する影響力を評価した結果,疾病・健康群(31.9%)が最も影響力が大きく,続いて歯科関連群(28.1%),咀嚼関連群(21.1%),食事関連群(17.2%),基本属性群(1.7%)であった.対象者の主観に基づく食嗜好の変化に影響した「きっかけ」に関する質問では,加齢と回答した割合が最も高かった.

     以上より,地域の前期高齢者において,歯科関連群,咀嚼関連群,食事関連群などの歯科に関係する要因群が疾病・健康群に次いで食嗜好を説明する要因として影響力を有していると考えられた.

  • 入江 浩一郎, 田畑 綾乃, 内田 瑶子, 江國 大輔, 友藤 孝明, 森田 学
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 70 巻 3 号 p. 144-151
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

     非侵襲的な歯周病の治療法として抗菌的光線力学療法(antimicrobial photodynamic therapy;a-PDT)が注目されている.a-PDTの臨床効果を評価した報告は多数あるが,細菌叢に着目した研究は少ない.本研究では,歯肉炎を有する学生ボランティアを対象に,a-PDTによる歯肉縁下細菌叢の形成に与える影響について検討した.下顎第一,第二大臼歯部に歯肉炎を有する男子学生6名(平均年齢24.2±0.98歳)を対象にした.被験者の下顎第一,第二大臼歯部を左右で分割し,照射(a-PDT)群もしくは対照群をコイントスで割付けた.照射群ではスケーリングとa-PDT を,そして対照群ではスケーリングを行った.処置開始前と処置の2週間後に,下顎第一,第二大臼歯部歯間部歯肉縁下から細菌を採取した.サンプルからDNAを抽出し,次世代シーケンス解析を行った.その結果,Red complexに属する細菌の割合は,照射群において処置前と処置後との間で有意な減少を認めた(p<0.05).一方,対照群においては,処置前後で有意差は認められなかった.本研究から,スケーリングとa-PDTを併用した場合,歯肉縁下細菌叢中の歯周病原性の高い細菌の占める割合が有意に減少することが示された.

  • 黒木 まどか, 晴佐久 悟, 青木 久恵, 中島 富有子, 窪田 惠子, 堀部 晴美, 内藤 徹
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 70 巻 3 号 p. 152-160
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,歯科衛生学生の口腔ケア教育を充実させるために,現在実施されている口腔ケア関連の教育プログラムが歯科衛生学生の口腔ケアに関する意識・認識・態度に及ぼす影響について調査することを目的とした.2017年4月に入学した歯科衛生学生62名を対象とし,その教育プログラム実施前の1年次と実施後の3年次に口腔ケアに関する質問紙調査を実施し,それらを比較した.両調査に参加した53名(回答率82.8%)のデータを分析した.ほぼ100%の学生が口腔ケアに興味があり,80%以上の学生が資格取得後,仕事で口腔ケアに関わりたいと感じていたが,調査間で差は認められなかった.教育実施後では,口腔ケアの対象者で,病棟患者,癌患者の認識率が有意に増加し(p<0.01),口腔ケアの提供場所で,在宅,回復期病棟,がん専門病院の認識率が有意に増加した(p<0.001).口腔ケアの誤嚥性肺炎の予防効果の認識率は1年次の56.6%から3年次の92.5%に有意に増加した(p<0.001).口腔ケアを学ぶのに必要と思う時間数は,口腔ケア教育実施後に有意に増加した(p<0.05).

     以上より,実施されている口腔ケア関連の教育プログラムが口腔ケアに関する認識・態度の向上に貢献している可能性が示唆された.向上が認められなかった意識・認識・態度について検討し,口腔ケア教育プログラムをさらに充実する必要がある.

  • 木林 美由紀, 堀内 賢蔵
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 70 巻 3 号 p. 161-167
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,咀嚼力向上を目的とした食育支援プログラムの陸上競技における運動能力の向上に対する有効性を検討した.同意が得られた公立高等学校普通科に在籍する高校生を対象とし,食育支援プログラム実施群と非実施群に無作為に割り振った.実施群には液体蒟蒻を応用した嚙み応えのある豆乳・おからドーナツ(けっこうかみごたえあるドーナツ®,株式会社白帆タンパク製)を1日1個30日間よく嚙むことを意識して食べることとした.両群とも食育支援プログラム開始前と終了時に咀嚼力,100 m走の疾走タイムを測定した.咀嚼力はチューインガムを用いて溶出糖量を測定し,デンタルプレスケール® 50HタイプRを用いて咬合力表示面積,平均圧,最大圧,咬合力を測定した.100 m走の疾走タイムは,公益財団法人日本陸上競技連盟の競技ルールブックに従って,手動計時方式にて測定し,食育支援プログラム実施前後の変化を検討した.その結果,実施群61名(男子48名,女子13名)の男子の100 m走の疾走タイムは,13.3± 1.2秒から13.2±1.1秒と有意に時間短縮し,咀嚼力は,溶出糖量,咬合力表示面積と咬合力が有意に向上した.女子は食育支援プログラム前後で,溶出糖量,咬合力表示面積,平均圧,最大圧と咬合力が有意に向上した.非実施群60名(男子47名,女子13名)は,いずれも有意な変化は認められなかった.したがって,本研究で実施した食育支援プログラムは,咀嚼力の向上および陸上競技における運動能力の向上に有効である可能性が示唆された.

緊急報告
  • 小山 史穂子, 竹内 研時
    原稿種別: 緊急報告
    2020 年 70 巻 3 号 p. 168-174
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

     COVID-19はパンデミックとなり,日本でも緊急事態宣言が発令された.歯科医療は治療の特性から,歯科医師と患者の交差感染リスクが高い可能性がある.本研究は,COVID-19感染拡大下の一般住民における歯科受診行動の実態を調査し,院内感染への懸念から,歯科受診に対して強い不安を抱いている者の特徴について検討することを目的とした.一般住民対象のWebアンケート調査を使用し,解析対象者は2020年5月1日~10日に回答した1,885名(女性798名)とした.基本属性および5つの歯科受診に係わる項目について単純集計を行った.さらに,院内感染への懸念から,歯科受診に対して強い不安を抱くかと,性別,年齢,居住地域,これまでの歯科受診頻度との関連を,ポアソン回帰分析で検討しPrevalence ratio(PR)を算出した.緊急事態宣言後に,歯科医院に行く予定がない者を除いた688名の内,47.2%が予約の取り消しや変更などで歯科受診しなかった一方,52.8%は歯科受診していた.院内感染への懸念から,歯科受診に対して強い不安を抱いていると回答した者は454 名(全体の24.1%)いた.多変量ポアソン回帰分析の結果,男性と比較し女性(PR=1.25,95%信頼区間=1.06;1.48),これまでの歯科受診頻度が「年に数回」の者と比較し「困った時のみ通院」の者(PR=1.36,95%信頼区間=1.15;1.61)で歯科受診に対して強い不安を抱く割合が有意に高かった.本研究結果は今後のウィズ/ポストコロナ時代の歯科受診行動を考えるうえで貴重な資料となり得る.

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