抄録
バングラデシュの12歳から17歳までの学童・生徒,計1,200名を対象に,顎機能異常(TMD)に関する有病率の調査を行った.対象者は,都市部,都市近郊部,そして農村地区から多段抽出された.TMDの自覚症状は,自己記入式質問調査票により調査された.また,診断基準の統一された4名の歯科医師が,顎関節の機能と咀嚼筋の症状を臨床的に診査した.その結果,約半数(男子の52%,女子の47%)が,少なくとも1つ以上のTMDに関する自覚的な症状を訴えた.そのうち,クリック音を訴える者の割合は,男子のほうが女子に比べて有意に高かった.しかし,開口制限や顎関節の疼痛に関して,男女間で有病率に有意な差はみられなかった.居住地区での差をみると,都市部に比べて,ほかの2地区では顎関節の疼痛を訴える者の割合が有意に高かった.歯科医師による臨床診査の結果,クリック音,関節部圧痛,咀嚼筋の圧痛の割合が農村部ではそれぞれ13.1,18.6,19.3%であり,都市部でのそれぞれの値である4.2,6.9,9.1%と比較して有意に高かった.以上のことより,バングラデシュにおいて相当数の学童・生徒がTMDの症状を自覚的・他覚的にもっており,地域によってもその有病率は異なることが示唆された.