抄録
前報では,透過レーザー法を用いて,成人を対象とする咬合平衡状況を指標とした咀嚼機能評価方法について検討したが,透過レーザー法は幼児に活用しやすいという特長を生かし,引き続き乳歯列期の咬合平衡状況の評価について検討した.対象は保育園児92名で,Hellman's dental age IIAの者をA群(dft=0),B群(1≦dft≦5),C群(6≦dft)に分け,IIC期の者をD群として,咬合接触面積,歯冠相当部体積およびその重心などの各指標について比較し,特に咬合平衡状況の変化を偏位率,前後比という新たな指標により把握可能かを検討した.その結果,1.各群における咬合接触面積の平均値を比較したところ,D群の値は,全レンジにおいてIIA期の各群の値を超えていた.2.偏位率ではA-D群間で,前後比についてはA-C群間,C-D群間でそれぞれの平均値間に有意差(p<0.05)を認めた.3.各評価項目間での単相関分析の結果から,偏位率とdftとの間に正の相関(r=0.28)を認め(p<0.05),歯冠相当部体積と前後比との間でも正の相関(r=0.60)を認めた(p<0.01).これらの結果から,著者らの方法により乳歯列期においても咬合平衡の差異を把握でき,発育期における個人口腔管理の重要性から,また,一口腔単位で齲蝕などの咀嚼への影響を把握するため,咬合平衡状況を観察する意義は大きいと考えられた.