口腔衛生学会雑誌
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原著
舌苔中の歯科疾患関連細菌と口腔内状況との関連性
高橋 雅洋岸 光男
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2006 年 56 巻 2 号 p. 137-147

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抄録

85歳高齢者,歯周組織の健全な若年成人(以下,健常者)およびその中間年齢層にあたり,歯周治療後のメインテナンスのために定期受診している者,合計292名から舌苔を採取し,菌種特異的PCR法により,4種の歯周病原性細菌と2種のミュータンスレンサ球菌を検出し,検出率を比較した.また,85歳高齢者と健常者においては歯科疾患関連細菌の検出と口腔内状況との関連を検討した.結果を以下に示す.1.無菌顎者の舌苔からの4種の歯周病原性細菌の検出率は低かった.また,有歯顎高齢者を含むその他の被験者群中では,健常者からのPorphyromonas gingivalis, Treponema denticolaの検出率が有意に低かった.これらより,歯周病に罹患していない者,歯周病感受性がない者の舌苔は,歯周病原性細菌の棲息部位となりにくいことが示された.2.健常者において舌苔と歯垢からの歯科疾患関連細菌の検出状況を比較したところ,T. denticola以外の細菌で,舌苔と歯垢からの検出に関連が認められた.さらに歯周病原性細菌に関しては,舌苔からの検出率が歯垢より高く,いずれか一方から歯周病原性菌が検出された場合には,主として舌苔からであった.これらの結果から,舌苔は口腔他部位への細菌の供給源であると同時に受容部位としても働き,さらに口腔他部位の細菌叢と相互に関連し合って,口腔全体の細菌叢を構成しているものと考えられた.

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© 2006 一般社団法人 口腔衛生学会
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