口腔衛生学会雑誌
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原著
咀嚼能力の評価における主観的評価と客観的評価の関係
富永 一道安藤 雄一
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2007 年 57 巻 3 号 p. 166-175

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抄録

2004年島根県瑞穂町(現邑南町)における,基本健康診査に参加した610名を対象として,咀嚼能力の主観的評価法として質問紙法を用いて摂取可能食品の状況と,客観的評価法として15秒間グミゼリーを咀嚼し,その分割数を数えた.両評価法を比較検討し,その違いに関して要因分析を試みた.その結果,現在歯数を4群(0/1-9/10-19/20以上)に分けたときに「全食品が噛める」と回答した者は,10-19歯群が最も少なく,「全食品が噛める」と回答した者の割合を縦軸,現在歯数群を横軸としたときグラフはU字形を示した.一方グミゼリー分割数は0歯群が最も少なく,現在歯数依存的に増加した.現在歯数が減少するに従い両者の評価が乖離することがわかった.そこで,それぞれの群において,主観的評価(「すべての食品が噛める」,「噛めない食品がある」)の違いが,グミゼリー分割数の差として現れているか否かについて調べると,現在歯数が少ないほどp値が大きくなり両者間に有意差が確認されにくくなった.さらに,グミゼリー分割数を目的変数とした重回帰分析でも20歯以上の群では主観的評価が有効な説明変数として採用されたのに対し,0歯の群では採用されなかった.したがって,主観的評価は現在歯数が少なくなるほど不正確になっていく可能性があるように思われた.

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© 2007 一般社団法人 口腔衛生学会
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