口腔衛生学会雑誌
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原著
農村地区住民における歯周組織の状態とメタボリックシンドロームの各項目との関係
山本 龍生恒石 美登里古田 美智子小山 玲子江國 大輔森田 学平田 幸夫
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2010 年 60 巻 2 号 p. 96-103

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抄録

わが国では平成20年度からメタボリックシンドローム対策として特定健診・特定保健指導が始まった.しかし,特定健診・特定保健指導には歯科に関する項目は義務付けられていない.また,メタボリックシンドロームと歯周疾患との関連については情報が不足している.本研究では,わが国の農村地区において行われた成人の健康診断の検査結果と歯周組織検査の結果をもとに,歯周組織とメタボリックシンドロームの各項目との関連性を検討した.岡山県北部の住民を対象とした基本健康診断と同時に行われた歯科検診を受診した30歳から64歳の246名(男性88名,女性158名)を対象としたと基本健康診断の項目のうち,喫煙状況,腹囲,最高血圧,最低血圧,中性脂肪,HDLコレステロールおよび空腹時血糖を分析に用いた.歯周組織の状態は左右側上下顎の第一および第二大臼歯,右側上顎と左側下顎の中切歯を代表歯とし,Community Periodontal Index(CPI)により評価した.CPI個人コードが2以下を歯周炎なし,3以上を歯周炎ありとして,全身のデータを比較した.糖尿病,高脂血症,高血圧の治療を受けている者はそれぞれ高血糖,血清脂質異常,血圧高値とした.統計分析には,カイ二乗検定とステップワイズロジスティック回帰分析を用いた.歯周炎ありと判定された者は101名(41.0%)であった.高年齢,男性,血圧高値,高血糖の者は有意に歯周炎有病者の割合が高かった(p<0.001, p=0.001, p=0.008, p<0.001,カイ二乗検定).歯周炎の有無を目的変数としたステップワイズロジスティック回帰分析では,年齢と性を調節しても空腹時血糖で有意差がみられた(オッズ比2.118,p=0.049).これらの結果から,メタボリックシンドロームである者が少ない集団では,空腹時血糖が歯周炎の罹患に有意に関連していることが明らかになった.地域における特定健診・特定保健指導において,特に空腹時血糖の高い者には歯周疾患に関する情報提供を行い,効率的な全身と口腔の健康増進が行われることが望まれる.

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© 2010 一般社団法人 口腔衛生学会
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