口腔衛生学会雑誌
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総説
最近の歯周病と栄養素・食品に関するエビデンス
雫石 聰田中 宗雄永田 英樹
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2011 年 61 巻 1 号 p. 2-12

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抄録

歯周病は慢性感染症であるとともに,生活習慣病の側面をもつと考えられているが,歯周病と栄養素・食品の関連性については十分明確にされていない.本総説では1995年1月から2010年7月における歯周病と栄養素・食品に関する英語の原著論文についてシステマティックレビューを行った.ビタミンCについては,横断研究により,その摂取量や血清(漿)レベルと歯周病有病との間に負の関連性や量-反応関係が示された.カルシウムについても,横断および縦断研究により,その摂取量や血清レベルが低いと歯周病有病や進行のリスクになることが示唆された.また,ビタミンDについては血清25(OH)Dレベルと歯周炎や歯肉炎との間に関連性がみられ,両者は量-反応関係も示した.そのほかマグネシウム,葉酸や抗酸化物などの欠乏も歯周病のリスクになる可能性が示された.脂肪酸では,オメガ-3系脂肪酸やドコサヘキサエン酸の摂取は歯周病の進行を予防し,トリアシルグリセロールやLDL-コレステロールの血漿レベルと歯周病有病との正の相関性が示された.一方,全粒穀物,緑黄色野菜,緑茶,大豆・イソフラボンや乳製品の摂取は歯周病予防に有用であるかもしれない.このように歯周病と栄養素・食品との関連についてのエビデンスは十分とはいえないまでも,ビタミンC,カルシウム,ビタミンDやオメガ-3系脂肪酸などの栄養素の摂取は歯周病のリスクを減少させるように作用することが明確にされつつある.

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© 2011 一般社団法人 口腔衛生学会
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