2015 年 65 巻 4 号 p. 354-361
生活習慣病予防はわが国喫緊の課題である.生活習慣病スクリーニングを受ける機会の提供,生活習慣病に関する情報提供,および,医療機関への適切な受診勧奨等が生活習慣病予防のために重要である.本研究では,これらを実施する場の一つとして歯科を捉え,その可能性を検討することを目的とした.簡易な血液検査による生活習慣病スクリーニングを歯周病メインテナンス期患者に行い,分析した.2014年1月から7月に岡山大学病院予防歯科外来を受診した歯周病メインテナンス期患者63名(男性22名,女性41名,平均年齢65.9±6.7歳)を対象に,自己記入式質問紙調査と指尖血の採取を行い,肝疾患,高脂血症(脂質異常症),腎疾患,痛風,糖尿病前症,および糖尿病の疑いの有無を判定した.
過去1年間の医療機関受診歴を53名(84.1%)が有していた.過去1年間に肝疾患,高脂血症,腎疾患,痛風,および糖尿病の診断のある者は,それぞれ3名,14名,2名,1名,3名おり,各々の分析から除外された.血液検査の結果,肝疾患,高脂血症,腎疾患,痛風,糖尿病前症,および糖尿病の疑いは,それぞれ対象者の16.7%,34.7%,16.4%,1.6%,46.7%,および6.7%に認められた.医療機関受診歴を有する者の多さに関わらず,生活習慣病予防が必要と思われる者の割合は十分多かった.歯科の場において,簡易な生活習慣病スクリーニングを行い,医療機関への受診勧奨等を行う流れを作ることで,国民の生活習慣病予防の一端を担えるかもしれない.