2017 年 67 巻 1 号 p. 29-34
本症例(女性,引継ぎ時85歳)は,初診時に慢性歯周炎と診断され,歯周基本治療を受けた後にSupportive Periodontal Therapy(SPT)を受けていた.しかしその後,プラークコントロールは悪化し,初診時から18年経過した時点においてO’Learyのプラークコントロールレコード(PCR)は55%,また平均歯周ポケット深さ(PPD)2.8±3.4 mm で,PPD4 mm 以上の部位が30%であった.また,一人暮らしになり,プラークコントロールの悪化に加えて,生活習慣の乱れ,自己否定の傾向がみられた.そこで,動機づけ面接法(MI)の技法を用いて,プラークコントロールを改善することを目標にした.患者自身の自律性を引出し,自己決定を尊重することに主眼を置き,やる気を誘うような会話の流れを導いていくことに重点を置いた.その中で,共感をもって傾聴することに時間を割いた.その結果,MI開始2年後の最終評価時には,PPDはすべて3 mm 以下となり,平均PPDは1.9 ± 1.2 mm であり,PCRは25%に改善した.また,ブラッシングの自己効力感も改善して,歯の喪失リスクが低下する可能性が示唆された.MIの技術を活用することによって患者の自己効力感の向上とともに,プラークコントロールの改善につながったと考えられる.以上のことから,SPT 期における長期的な歯周組織の安定のためには,MIを含めたプロフェッショナルケアが重要であることが示唆された.