口腔衛生学会雑誌
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原著
抗菌的光線力学療法が歯肉縁下細菌叢の形成に与える影響について
入江 浩一郎田畑 綾乃内田 瑶子江國 大輔友藤 孝明森田 学
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2020 年 70 巻 3 号 p. 144-151

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抄録

 非侵襲的な歯周病の治療法として抗菌的光線力学療法(antimicrobial photodynamic therapy;a-PDT)が注目されている.a-PDTの臨床効果を評価した報告は多数あるが,細菌叢に着目した研究は少ない.本研究では,歯肉炎を有する学生ボランティアを対象に,a-PDTによる歯肉縁下細菌叢の形成に与える影響について検討した.下顎第一,第二大臼歯部に歯肉炎を有する男子学生6名(平均年齢24.2±0.98歳)を対象にした.被験者の下顎第一,第二大臼歯部を左右で分割し,照射(a-PDT)群もしくは対照群をコイントスで割付けた.照射群ではスケーリングとa-PDT を,そして対照群ではスケーリングを行った.処置開始前と処置の2週間後に,下顎第一,第二大臼歯部歯間部歯肉縁下から細菌を採取した.サンプルからDNAを抽出し,次世代シーケンス解析を行った.その結果,Red complexに属する細菌の割合は,照射群において処置前と処置後との間で有意な減少を認めた(p<0.05).一方,対照群においては,処置前後で有意差は認められなかった.本研究から,スケーリングとa-PDTを併用した場合,歯肉縁下細菌叢中の歯周病原性の高い細菌の占める割合が有意に減少することが示された.

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© 2020 一般社団法人 口腔衛生学会
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