2021 年 71 巻 4 号 p. 238-244
過去に保育所・学校等をベースとした集団フッ化物洗口(以下,「フッ化物洗口」という.)のう蝕予防効果に関する研究が多数実施されているものの,国内では1970〜90年代に公表されたものが多い.従前よりもう蝕有病状況が改善した近年の状況下におけるフッ化物洗口の有効性を検討する意義は大きいと考え,今回,小学校におけるフッ化物洗口を導入していた自治体で,フッ化物洗口実施小学校と非実施小学校の両方の卒業生の進学先となっている中学校において,診査者目隠し法による歯科健診を行った.実施小学校出身者72人(経験群)と非実施小学校出身者592人(非経験群)の永久歯について,う蝕経験歯数(DMFT)の分布,う蝕経験のない者の割合,う蝕多発者の割合,平均DMFT,平均う蝕経験歯面数(DMFS)などを比較した(2016〜2018年度の中学1年生,男性352人:女性312人).人単位の指標にはχ2 検定,歯数および歯面単位の指標にはt検定を用い,有意水準5%とした.
DMFTの分布を相対度数による図で確認したところ,両群ともDMFTの最小値は0で,かつDMFT=0が最頻値であった.しかし,経験群では左側へ偏った幅の狭い分布を示し最大値が4本(2人,2.8%)であったのに対し,非経験群では5本以上の割合が31人,5.2%であり,10本および14本(各1人,計0.3%)に該当する者も存在するなど,経験群とは明らかに異なる,裾が右側に長い形状であった.
う蝕経験のない者の割合に統計的に有意な差は認められなかったものの(p=0.367),4本以上のう蝕を有する「う蝕多発者」の割合(95% 信頼区間:95%CI)は,経験群2.8(0.0–6.6)% に対し,非経験群は12.0(9.4–14.6)% と,統計的に有意な差があった(p=0.031).また,両群の平均DMFT(95%CI)は経験群0.56(0.31–0.80)本に対して非経験群1.02(0.87–1.16)本(p=0.002),同じく平均う蝕経験歯面数(DMFS)は経験群0.69(0.37–1.02)面に対して非経験群1.48(1.25–1.71)面(p<0.001)であった.
以上の結果から,う蝕が比較的少ない地域においても,小学校6年間の継続したフッ化物洗口による永久歯う蝕予防効果が確認され,多数歯う蝕を防ぐことにより健康格差が縮小することも示唆された.