口蓋裂は, 出現頻度からみて, 全先天奇形中上位にあり, 口腔先天異常に極めて重要な位置を占めている。最近WatanabeとIng は妊娠ハツカネズミをアロキサン糖尿病にかけ, 種の奇形仔をえ, さらに, 妊娠の経過中アロキサン 投与する時期により, 現れる奇形の種類や頻度の異るをみた。
著者は, 妊娠ハツカネズミにアロキサンを静注し, さちにインシュリンを投与して, 口蓋裂の出現頻度を非インシュリン投与群と比較した。
本実験に先立ち, 予備実験を行い, アロキサン80mg/kg体重を静注して生ずる過血糖に対抗し, 低血糖をおこす危険のない“lente insulin”の量, およびその投与時期を決定した。
妊娠11日目の動物にアロキサン80mg/kg体重を与え, その36時間後より, 12時間毎に, 妊娠15日目まで7回, “lente insulin”0.4単位を皮下に与えた。 母ネズミを妊娠19日目に開腹し, 胎仔を取り出し, 外見的奇形の観察を行った。
インシュリン投与群の成功妊娠40例からえた胎仔数407中には, 1例の奇形仔もみることはなかった。 これに反し, 非インシュリン投与群では, 母ネズミ40, えた胎仔367, その中, 奇形仔をもつ母親は9例 (22.5%), 胎仔25例 (6.8%) に口蓋裂をみた。
これら奇形仔をもつ母親は, しからざる母親に較べ, 血糖値に格別の特徴をみることはできなかったけれども, 妊娠による体重増加率が極めて低かった。