口腔衛生学会雑誌
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Streptomyces globisporus由来の溶菌酵素の人工歯苔除去作用に関する走査型電子顕微鏡的研究
デキストラナーゼおよびリゾチームの協同効果
井上 昌一古賀 敏比古森岡 俊夫
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1974 年 24 巻 4 号 p. 315-321

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抄録

既報の如く, Streptococcus mutansm BHT株の形成する人工歯苔をStreptomycs globisporus 1829株由来の溶菌酵素で処理すると, 構成菌体は歯苔内のin situにおいて溶解されるが, 網目状構造物が歯面に残存する。本研究は, この網目状溶解残存物を種々の酵素を用いて処理したのち走査型電子顕微鏡を用いて観察し, 同物質の歯面からの除去の方法を探索するとともに, 残存物質の本態を知る手懸りを得ることを目的とした。
溶菌酵素処理後に残存する網目状構造物をデキストラナーゼAD-17によって処理すると, 細糸および糸状物の形成する細かな網目構造は殆んど消失し, 輪郭の明確となった短い膜様帯状物の形成する断続的で粗な網目構造のみが残存した。同時に歯面に付着残存している非溶解菌体の数は減少した。一方上記人工歯苔に溶菌酵素と卵白リゾチームとを同時に作用させると, 細糸および糸状物より成る一層の比較的密な網目構造が残存し, 膜様帯状物および非溶解菌体は殆んど認められなくなった。更にこれら3酵素の同時および継続併用によつて人工歯苔は殆んど完全に歯面より除去された。デキストラナーゼP, トリプシンおよび核酸分解酵素は無処理および溶菌酵素処理歯苔の構築に対しても何の影響も与えなかった。
以上の結果をもとに, 溶菌酵素との併用によってデキストラナーゼAD-17および卵白リゾチームが示す歯苔除去作用の機作ならびに溶菌酵素処理後に認められる網目状溶解残存物を形成する物質の本態について考察した。

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