口腔衛生学会雑誌
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実験的ヒト歯苔の形態的検索
メッシュをとり除いた試料台を使用した場合
西原 圓一朗
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1981 年 31 巻 3 号 p. 244-251

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抄録
筆者は前報で, 砂糖および代用甘味剤・カツプリングシュガーCにより形成させたヒト歯垢形態を検索し, 用いた実験条件下では, C-S.C例は砂糖例にくらべ, 口腔細菌が歯質に作用する割合も, 歯垢内で温存される割合も共に少ない事を示唆した。しかし, 使用した試料台は試料部分に大きな障害物が入りこまないようにメッシュの被覆を行なっているため, その影響が歯垢形成に関与するかも知れない。そこで今回は, 口腔内装置の3箇の可撤性試料台にメッシュの被覆のないものを使用し, その他の方法および材料は, 前報と同じ条件下で実験した。すなわち, 試料の歯牙表面を6日間, ヒトの口腔環境にふれさせ, この間In vitroで1日4回各37℃30分間, それぞれの試料に指定の試験液 (対照としての生理食塩水, 3%砂糖水, 3%C-S.C水) を作用させた後に形成された歯垢深部の形態を主に電顕 (HS-8) にて観察し, 次の知見を得た。I, 砂糖水例はC-S.C例にくらべ, 菌体表面のfimbriaや原形質の電子線透過性が顕著でない。菌体間に存在する空胞は少ないが, 無定形物質は多い。一方, 歯質表面の歯小皮様物質はC-S.C例と同じか, むしろ多くみられた。この事は, 前報のメッシュ被覆例と同様に, 砂糖水例はC-S.C例よりも, 菌体が変動が少なく安定して保護されているのかも知れない。 一方, 歯質への影響は, 一概には云々出来ないものと思われる。II, 今回, 全例の共通としては, 菌体間部分の小顆粒状物質の存在が多く, また, 歯垢の厚さが3例共, 同じであった事が, 前報のメッシュ被覆例との相違として観察された。以上の点より, メッシュ被覆をしない例と被覆例は, 大きな傾向は変らないが, 細部所見は相違点が見られている。そして, メッシュ被覆例と比較して, 被覆のない例の方が, より直接的な口腔環境の影響の結果をつかみ得るものと思われる。
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