抄録
個人が長期的に行うプラークコントロールとして, 歯ブラシは安全性の点から, 最も一般的であると考えられる. 本研究では, 特に歯周疾患の予防あるいは治療を目的とした歯頸部清掃をより効果的に行う上で, スクラッビング法における歯ブラシ角度の影響について検討を行った。
我々が計測した結果, スクラッビング法に習熟している患者において, その平均的歯ブラシ圧はパームグリップにおいて369±91gであった。そこで, 昭和大学歯学部歯科病院保存科に新患来院した患者23名より適度にプラーク付着を有する133歯面を選び, 同一術者が歯頸部に対して45°あるいは90°の角度で, ハードあるいはソフトブラシで, 歯ブラシ圧約300~450gで歯頸部プラークが完全に除去されるまでブラッシングを行った。術前写真よりmod. C.P.I., Pl. I., Navy Pl. I.およびP.H.P. を評価した。この結果, 4グループ間には術前プラーク量に差はなく, ブラッシングストローク数ではハードブラシが少ないストロークで歯頸部プラークを除去する傾向が認められた。また, ハードブラシを歯ブラシ角度45°に使用したブラッシングにおいてのみ, 術前プラーク量とこの歯頸部プラーク除去に必要とされたストローク数の間に有意な相関が認められた (p<0.05)。
次いで歯ブラシ角度と歯ブラシ圧に関して検討を加えた。人工歯に均一なコーティングを施し, ブラッシングマシーンを用いて各々一定時間ブラッシングを行った。歯ブラシ角度は45°あるいは90°に設定し, 歯ブラシ速度は192/分とし, 歯ブラシ圧は100gから1000gまで100g単位で検討を行った。ブラッシング終了後, 試料を直接コンピューターに画像入力し, PC 9801VM4, TVIP 2000, IMAGE COMMAND 98を用いて画像解析を行った。その結果, 歯ブラシ圧400gにおいて歯ブラシ角度45°が歯ブラシ角度90°に比べて有意に歯頸部清掃効果が高く (0.01<p≦0.05), 歯ブラシ圧300~450gでは歯ブラシ角度45°がより高い清掃性を示した。この結果は先の臨床実験を裏付ける結果であった。尚, 歯ブラシ圧200gでは歯ブラシ角度90°が有意に効果的であり (0.01<p≦0.05), 歯ブラシ圧100から250gでは歯ブラシ角度90°がより高い清掃性を示した。
以上の結果から, 歯頸部清掃を目的としたブラッシングにおいて, 歯ブラシ角度は清掃効果に有意に影響を及ぼす因子であると考えられた。また, 歯ブラシ圧の増大が必ずしも高い歯頸部清掃効果にはつながらないことが示された。