環境化学
Online ISSN : 1882-5818
Print ISSN : 0917-2408
ISSN-L : 0917-2408
巻頭言
有機フッ素化合物
中田 晴彦
著者情報
ジャーナル オープンアクセス HTML

2026 年 36 巻 Special_Issue 号 p. s1

詳細

「有機フッ素化合物」(PFAS)という汚染物質を初めて認識したのは2001年と記憶している。ミシガン州立大学のKurunthachalam Kannan博士が,米国化学会「Environmental Science and Technology」誌に極域のシロクマを含む世界中の野生生物からペルフルオロオクタンスルホン酸(Perfluorooctane Sulfonate: PFOS)の検出を報告し1,地球規模の汚染拡散が知れ渡る端緒となった。2002年,私は文部科学省の在外研究員としてKannan博士の研究室に長期滞在してPFASの分析法を修得し,日本の環境試料の分析も行った。その当時,POPsの代表格である有機塩素化合物に加え,生物蓄積性や環境残留性が懸念され始めていた有機臭素系難燃剤が国内外の学会で議論されていたが,同じハロゲンでありながらフッ素を有する長鎖有機化合物の汚染物質としての特性や重要性を認識できる情報は皆無に等しかった。

それから四半世紀が経過し,状況は大きく変わった。この間,国内外の環境化学研究者は精力的にモニタリング調査を行い,PFASはあらゆる環境媒体に存在し,生物濃縮性が高く長距離移動することもわかった。また,PFASの毒性とその発現機序に関する研究も進み,その一部は発がん性や生殖・発生影響の疑いが強まり,多くの国や地域で様々な規制がとられるようになった。日本でも2026年4月にPFOSとPFOAが「水質基準項目」に指定されることが決まっている。

(一社)日本環境化学会には,PFASを対象に調査研究を行っている研究者が多く在籍している。研究の切り口は「分析法確立」「モニタリング調査」「毒性評価」「発生源解析」「処理技術開発」等さまざまで,規制の策定に関係する方も含まれる。そこで今回,PFAS研究の第一線で活躍されている12名の学会員に執筆を依頼して,「PFAS研究の現在地とこれから(Environmental Chemistry for PFAS Research -Current and Future-)」と題した特集号を発刊することになった。本号を手にした読者が,過去から現在に至るPFASの基礎および応用研究の理解を深め,今後の汚染対策に資する社会的・学術的価値を見出す機会となることを願っている。

最後に,膨大な時間と手間をかけて無償でご執筆いただいた著者の皆さま,ならびに原稿の質向上にご尽力いただいた査読者の方々に心よりお礼申し上げます。

文献
 
© 2026 著者

この記事はクリエイティブ・コモンズ[表示-非営利-改変禁止4.0国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
feedback
Top