基地における消火活動や消火訓練による,周辺の表流水や地下水のPFAS汚染が近年大きな問題となっている。水成膜泡消火剤AFFFは激しい油火災を消火し人命や資産を保護する有効な手段として,半世紀以上にわたり精力的に開発され利用されてきた。しかしながらAFFFのPFASやその他の添加物は企業秘密で公開されておらず,汚染の把握や適切な対策の遅れが生じて事態のさらなる悪化が引き起こされている。AFFF由来のPFAS汚染に対する効果的な対策実施を支援するための科学基盤の強化を目的として,本総説では米軍におけるAFFFの開発経緯並びにPFASやその他の添加物の組成に関する定量的情報を収集,整理した。AFFFの主要成分は製造メーカーにより異なり,製品の種類や製造時期によっても変化する。また,主成分として複数の異なる構造のPFASが混合されている場合も多く,AFFFからはその合成中間体或いは副生成物と思われる物質も検出される。特に日本で使われたAFFFのPFASに関する情報は不足しており,分析や毒性評価のための標準物質の整備と,国内における使用AFFFの組成や基地その他のAFFF使用箇所周辺の汚染実態解明が求められる。
山形県上山市川口地区では2018年以降,廃棄物発電能力を備えたエネルギー回収施設川口が稼働し,農作物への影響と人体への健康被害が懸念されていた。廃棄物処理による排出が懸念される化学物質の1つとして,微量元素に着目し,周辺環境の無機試料の33元素濃度分析を実施した結果,Co,Ni,Cu,Zn,As,CdとPbの濃縮係数(EF値)が人為的に強い汚染を示す数値にあることが明らかとされた。また,当該施設から東方方向への拡散,とくに 1.7 kmから 3.0 km地点にはホットスポットの形成が示唆され,調査地域の主要風向である西風と周囲を山に囲まれた地形によるダウンドラフト現象による影響が想定された。また,As,HgおよびPbに関しては当該施設からの直線距離に応じて,EF値が減少する距離減衰傾向を示した。これらの汚染が懸念される元素と拡散状況の傾向は欧州の類似施設周辺における化学物質汚染状況と類似しており,当該施設の稼働が周辺環境への微量元素負荷要因の1つであることが想定された。廃棄物発電施設の適切かつ安全な運用と周辺環境保全を共に実現するためにも,市民および施設関係機関の連携調査や廃棄物発電に関する技術革新にむけた研究が必要とされよう。