環境化学
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最新号
PFAS研究の現在地とこれから
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巻頭言
総説
  • ―フッ素系界面活性剤を中心に―
    柴田 康行
    原稿種別: 総説
    2026 年36 巻Special_Issue 号 p. s2-s8
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/16
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    PFOS,PFOAを含むレガシーPFAS並びに代替,未規制PFASの主な化学構造と特徴,用途について,その歴史的発展並びに規制の経緯とともにまとめた。データギャップや研究ニーズを指摘し,管理における課題についても考察した。

  • 遠藤 智司
    原稿種別: 総説
    2026 年36 巻Special_Issue 号 p. s9-s17
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/16
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    ペル及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)はその高い残留性と健康への悪影響の可能性から,大きな環境問題となっている。本稿ではPFASの分配および吸着特性に関する現在の知見を概観し,これらの特性がPFASの環境動態にどのように影響を及ぼすかを論じる。アルキル鎖のペルフルオロ化は分子サイズを増加させるがファン・デル・ワールス相互作用を大きく変化させないため,結果として疎水性を増大させ,凝縮相からの揮発性を高める。またペルフルオロ化は近傍の官能基の電子的性質にも影響を与え,その顕著な帰結の例としてpKaの低下があげられる。一般的な陸域環境において,中性PFASは高い揮発性と水相への分配傾向の低さから,スルホンアミド基のような強い極性官能基を持たない限り,主に大気中に分布すると予測される。一方,イオン性PFASは,大気,土壌,生物相といったコンパートメントにおいて複雑な分配挙動を示す。この挙動は水相および固相の組成に強く影響され,依然としてさらなる研究が求められる。

  • 谷保 佐知
    原稿種別: 総説
    2026 年36 巻Special_Issue 号 p. s18-s26
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/16
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    ペルおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)は多様な構造と性質を持つ化合物群であり,個別化合物を定量するターゲット分析が主に用いられてきた。高選択性・高感度なLC-MS/MSによるターゲット分析は,規制物質の監視などにおいて中心的な役割を果たしているが,標準物質のないPFASやターゲット分析で測定が困難なPFASも含めて網羅的に評価することは困難である。こうした課題を補完する手法として,抽出態有機フッ素(EOF),吸着態有機フッ素(AOF),酸化性前駆体総濃度分析(TOP assay)などのPFAS Total分析法が用いられている。これらのPFAS Total分析法は,ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)を含むPFASの評価が可能であるが,すべてのPFASを完全に捉えることはできない。各手法には,検出可能なPFASの特性や分子構造に応じた分析ウィンドウが存在するため,包括的な評価を行うには,分析目的や対象化合物,試料マトリクスの特性に応じた最適な手法の選択と組合せが重要となる。PFASの環境モニタリングを効果的に実施し,持続可能な管理を実現するには,ターゲット分析に加えて,PFAS Totalスクリーニング手法の実用化と標準化を進めることが求められており,今後の研究と制度設計の両面での取り組みが期待される。

  • 山本 敦史
    原稿種別: 総説
    2026 年36 巻Special_Issue 号 p. s27-s33
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/16
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    幅広い物性の物質に適用可能なイオン化法を備える高分解能質量分析にクロマトグラフィーを合わせた測定が多くの環境分野の研究者にも身近なものとなった。予め分析対象を限定しないノンターゲット分析は膨大な種類の化合物が含まれるとされるPFASの実態に迫る上で有望である。本総説では高分解能質量分析を用いるノンターゲット分析について紹介し,PFASをどのようにノンターゲット分析データから読み取るかを解説する。何を知ることができ,何が分からないかを議論し,補完的な分析技術についても触れる。

  • 野見山 桂
    原稿種別: 総説
    2026 年36 巻Special_Issue 号 p. s34-s43
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/16
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    現在の日本では,河川や飲料水におけるPFAS汚染,土壌への吸着および地下水汚染とそれに伴うリスクに注目が集まっている。一方で,野生生物における汚染状況については依然として知見が乏しい。PFASの生物影響を考慮すれば,高次栄養段階の生物を対象としたバイオモニタリングは,環境汚染の実態および生態系への影響を把握するうえで極めて重要である。しかしながら,PFASの分析法には依然として技術的課題が残されている。今後は,レガシーおよび新興PFASを含む包括的なモニタリング体制の構築と,高精度かつ高感度な分析手法の導入が求められる。日本においても国際的な協調のもとでモニタリング体制の拡充を図り,多様なPFASに対する包括的な管理戦略を早急に確立する必要がある。

  • 原田 浩二, 藤井 由希子
    原稿種別: 総説
    2026 年36 巻Special_Issue 号 p. s44-s49
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/16
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    ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)は撥水・撥油剤,泡消火剤,フッ素樹脂製造補助剤などに使用されてきた。日本国内では血中PFAS濃度に地域差が認められ,曝露源として,関西や東京の複数地点で濃度が高かった飲料水が考えられた。一方で魚や貝類からPFOSなどが検出されている。血中PFAS濃度は魚介類摂取量と相関することから,魚介類からの摂取は曝露のベースラインとなると考えられる。ヒトバイオモニタリング,特に血液サンプルを用いた手法がPFAS曝露評価において信頼性が高い。PFOSとPFOAは主に血液と肝臓に分布し,長い半減期を有する。尿や母乳中のPFAS濃度は低く,分析には血漿または血清が適している。過去のデータでは,1970年代から2000年代にかけて日本の血液サンプルでPFAS濃度が上昇している。また,長鎖ペルフルオロアルキルカルボン酸も広く存在する。沖縄,大阪,岐阜など地域的な汚染が存在する地域での2020年以降の調査では,ドイツや米国の機関が推奨する指針値を超える高濃度のPFAS血中濃度が確認された。今後の取り組みとして分析方法の標準化,曝露源の特定,包括的な健康リスク評価が求められる。

  • 石橋 弘志
    原稿種別: 総説
    2026 年36 巻Special_Issue 号 p. s50-s58
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/16
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    ペル及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の生態毒性情報は,残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約の対象物質であるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA),近年POPsに追加されたペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)や長鎖ペルフルオロカルボン酸(PFCA)については蓄積されつつある。一方で,PFOSやPFOAと類似の構造的特徴をもち,1万種類以上あるとされる代替及び新規PFASの生態毒性情報は極めて少ない。水環境はPFASを含めさまざまな化学物質が流入するため,水環境中に生息する水生生物に対する毒性影響やリスク評価は喫緊の課題である。本稿では,小型魚類(ゼブラフィッシュ,ミナミメダカ)を中心に,in vivo試験によるPFASの神経系,免疫系,肝臓・脂質代謝系,甲状腺ホルモン及び生殖系に及ぼす影響と,それぞれの影響メカニズムや遺伝子・タンパク質の発現変化を解析した研究事例を整理した。また,ECOTOXデータベースから抽出された魚類に対する毒性閾値や影響濃度と公共用水域等の指針値を比較するとともに,PFASの生態影響に関する今後の課題と展望について提言した。

  • 中山 祥嗣
    原稿種別: 総説
    2026 年36 巻Special_Issue 号 p. s59-s64
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/16
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    ペル及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)は難分解性の工業化学物質で,ヒト曝露が世界的に確認されている。2020年以降の体系的レビュー又はメタ解析と主要原著論文を整理したところ,最も一貫した関連は1)脂質代謝(総/LDLコレステロール上昇),2)肝障害指標・脂肪肝,3)ワクチン抗体応答低下(特に小児)であった。さらに高血圧症,2型糖尿病,甲状腺機能,出生低体重・妊娠転帰,女性の受胎能低下,男性の精液所見との関連も示唆されるが,エビデンスの不均一性や曝露評価の不確実性に関する限界が残る。発がん性では国際がん研究機関がPFOAをヒト発がん性(Group 1),PFOSをGroup 2Bと評価した。近年,EFSAのTWI(4 PFAS合計 4.4 ng/kg/週)や米国EPAの2024年飲料水規制など指針値・規制値は厳格化している。今後は一般集団レベルの前向き研究,混合・新規PFAS,感受性期の検討,バイオマーカー変化の臨床的意義の確立が必要である。なお,動物実験で確認された影響の多くはヒト環境曝露より数桁高い濃度で認められており,低濃度曝露域でのバイオマーカー変化の臨床的意義の解明が課題である。

  • 齋藤 隼輝, 小澤 真人, 谷 涼那, 三宅 祐一
    原稿種別: 総説
    2026 年36 巻Special_Issue 号 p. s65-s73
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/16
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    イオン性PFASを中心にPOPsへの指定が行われ,イオン性PFASの環境挙動・汚染実態を考慮した結果,水環境を中心にPFASの調査・規制が進んできた。今後,食品接触素材に使用されるPFASに関しては,日本国内や国際的な規制強化にも波及することが予想される。また,食品接触素材だけでなく,我々は生活の中の様々な場面で工業製品・消費者製品と接触しており,身近な消費者製品などからのPFAS曝露による健康影響が懸念されている。本稿では,国際的に懸念され始めている工業製品・消費者製品中のPFAS含有実態について概説し,主に消費者製品が発生源・排出源として想定される室内環境中のPFAS汚染実態について文献調査を行った。

  • 堀 久男
    原稿種別: 総説
    2026 年36 巻Special_Issue 号 p. s74-s78
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/16
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    PFASと呼ばれる化合物の範囲は定義の変更によりこの10~20年の間に大きく拡大している。その中には有害性が高いものもあれば,無視できるものもある。フッ素ポリマーも含めたPFASにはカーボンニュートラルの社会や高度情報通信社会の実現に不可欠なものも含まれている。また,有害性が無視できるような場合でも効果的な廃棄物処理技術やリサイクル技術が存在しないことはサプライチェーン構築の上で許容されなくなっている。本稿ではフッ素系イオン液体や二次電池用PFAS,さらにはポリマーであるPVDFやFEPのような「先端PFAS類」が,亜臨界水を用いることで効果的に無機化できること,一部の材料については得られたFから原料である人工蛍石が得られることを示した。

  • 小林 憲弘
    原稿種別: 総説
    2026 年36 巻Special_Issue 号 p. s79-s89
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/16
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    日本の水道水質管理において,PFASのうちPFOSおよびPFOAの2物質は,2020年に水質管理上留意すべき「水質管理目標設定項目」に位置付けられ,これらの合算値として 50 ng/Lの暫定目標値が設定された。これら2物質は2026年4月には検査義務が課される「水質基準項目」に格上げされることが決定しており,50 ng/Lの暫定目標値は基準値となる。PFHxSは2021年に毒性評価が定まらず水道水中での検出実態が明らかでないことから情報・知見を収集する「要検討項目」に位置付けられたが,その目標値はまだ設定されていない。また,2025年6月にはPFHxS以外に7種のPFASが要検討項目として新たに追加された。現在,水道水中PFASの標準検査方法(通知法)は,PFOS,PFOA,PFHxSの3物質を対象として,「水質管理目標設定項目の検査方法」(通知法)として環境省から示されているが,PFOSおよびPFOAの水道水質基準への格上げに伴い,検査方法は「水質基準に関する省令の規定に基づき環境大臣が定める方法」(告示法)として設定されることから,検査方法の見直しについて議論されている。本稿では,日本の水道水質管理におけるPFOS・PFOAを含むPFASの規制と検査方法の動向と課題について解説した。

  • 鈴木 規之
    原稿種別: 総説
    2026 年36 巻Special_Issue 号 p. s90-s97
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/16
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    各国や国際機関においては異なるPFAS物質やカテゴリーが採用されている。化学構造の特性に基づくグループを定義することもあれば,特定の物質をPFASのリストとして示す場合もある。それぞれの異なる個別物質やグループに対して異なる管理措置が適用されている。このように各国での対象物質は大きく異なるように見えるが,一方で,著者は各国等がPFASを考える際の最初の定義はおおよそ共通であり,ただし,各PFAS物質に対する知見の不確実性や不足に対する措置の判断が異なることが,異なる管理措置に見えるように至っていると考える。科学的知見の不確実性あるいは不足に対応する適切な措置を考えることが重要であり,このためには,あるいは予防的アプローチとリスク評価的アプローチとを知見と管理の関心に応じて適切に組み合わせて考察していくことが有効な可能性がある。

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