環境化学
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臭素化難燃剤による環境汚染
近年の傾向
崔 宰源森田 昌敏
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2001 年 11 巻 4 号 p. 773-783

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抄録
近年, 新しい環境問題として挙げられている臭素系難燃剤による環境汚染について汚染地域の状況, 生物濃縮, 人体暴露および近年の経年変化に関する情報をまとめた。臭素系難燃剤の毒性に関する報告は少ないが, PBDEによる甲状腺ホルモン (T4) の減少, Ah受容体のアゴニスト/アンタゴニストとして働く同族体の存在, EROD誘導など, 既存の有機塩素化合物と同様な影響を及ぼす可能性が指摘された。動物実験による体内半減期の長さが, あるPBDE同族体について塩素化ダイオキシン類に匹敵するという見解や有機塩素化合物と同様に胎盤と授乳による次世代への暴露も証明された。
一方, 人体への暴露経路として食事だけでなく, 製品のリサイクル現場で呼吸による暴露経路の存在なども明らかになっている。大気中でPBDEは粒子態―ガス態間の分配が生じることや大気輸送により汚染源が存在しない場所の生物にも蓄積されている。また, 様々な環境試料および人体試料の経年変化は臭素化難燃剤の使用期間に相関して増加傾向にある。最近, 話題になっている臭素化ダイオキシン類については, 生成, 分解に関する報告と実態調査の結果が散見されるが, まだ基礎的な段階にあると考えられる。今後, 臭素化ダイオキシン類についても臭素系難燃剤とあわせて環境中の存在や挙動を詳細に調べていく必要がある。
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© 日本環境化学会
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