環境化学
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世界湖沼および河川魚類中のPCBおよび有機塩素系農薬の残留
津田 泰三
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2002 年 12 巻 1 号 p. 1-22

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抄録
世界の湖沼および河川に生息する魚類中のPCB, DDT類およびHCH類の残留について, 1990年代に実施された調査を総説した。合衆国の五大湖およびロシアのバイカル湖におけるPCBおよびDDTの魚体中残留量は他の湖沼と比較して高かった。ミシガン湖の魚体中PCB濃度は琵琶湖と比較して約100倍高いが, 1980年代中頃まで減少傾向を示し, これ以後については横這い状態であるという共通点が認められた。一方, 五大湖周辺の河川およびフランスのセーヌ川におけるPCBの魚体中残留量とインドのガンジス川におけるDDTおよびHCHの魚体中残留量が他の河川と比較して高かった。バイカル湖およびナイバシャ湖における魚体中のpp'-DDTの比率が高いことからロシアおよびケニアにおいてDDTの使用が推察された。一方, 合衆国, エジプトおよびヨーロッパの湖沼および河川については魚体中のpp'-DDTの比率が低く, DDTの未使用が推察された。HCHについては高い魚体中残留量を示す湖沼および河川はなかったが, 日本, 中国およびロシアでは魚体中HCH異性体の構成比率でγ体の比率が低く, HCH原体をそのまま使用したことが推察された。一方, 欧米諸国は逆にγ体の比率が高くリンデンの使用が推察された。
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