環境化学
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各種分析方法による水中のトリハロメタン類の測定値に影響をおよぼす要因
中西 成子西尾 高好日野 隆信
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1996 年 6 巻 3 号 p. 329-337

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抄録

水中のTHM類測定のための二つの外部精度管理の結果について考察した。用いられた試料水は, 一つは水, 河川水および人工海水に標準溶液を添加したものであり, もう一方は水道の蛇口水であった。THM類の濃縮法としては, P&T法, HS法および溶媒抽出法が検討され, ガスクロマトグラフの検出器としては, 質量分析計, 電子捕獲型検出器および水素炎イオン化検出器が比較検討された。データの信頼性は測定環境からの汚染の有無と, 分析方法の違いに大きく影響されることが明らかになった。内容を要約すると以下の通りである。
(1) クロロホルムの測定において, 測定環境からの汚染のために空試験値を補正する必要がある場合は, 空試験値を補正しても, 測定値にほとんど信頼性がないことが確認された。
(2) MSの応答値は, 測定時間の経過と共に減少する特性があることが示された。この経時変動は, 内標準法を用いることにより補正が可能であった。
(3) P&T法において, 内標準法と絶対検量線法による測定値に有意差が認められた。絶対検量線法による値が低い理由としては, (2) のMSの応答値の経時的変動を補正できないためと考えられる。内標準法による測定値の変動係数が大きい要因の一つとして, 標準液の添加の際の誤差が考えられる。
(4) HS法と同様に, P&T法によるTHM類の測定でも, 塩濃度の高い試料水への適用は測定値に正の誤差を生じる。試料水と標準液に塩化ナトリウムを飽和状態まで添加することが必要である。
(5) 溶媒抽出法による測定値は他法に比べて低かった。その原因は, 抽出率が不十分なためであり, 検量線を作成する際にも抽出操作を行う必要があることが明らかになった。

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