幼児の協同性の育ちについて、幼児教育の実践の場で行われる研究では、様々な事例をもとにして研究が行われてきている。本研究は、幼児の自発的な遊びとしての劇ごっこに焦点を当て、その保育記録から、音楽表現が協同的な学びにつながる過程を明らかにし、教師の役割を考察することを目的とする。劇ごっこの保育記録を、「遊びの中で共通の目的を見出す姿」「遊びの中で協力工夫しようとする姿」の2つの視点から分析し、音楽表現が幼児の協同的な学びにつながる過程でどのように影響していたのかを考察した。そのことを踏まえ、協同的な学びにつながるための環境の構成や教師の援助について考察した。その結果、幼児の実態に合わせた遊びのテーマや楽器等の提示、幼児同士をつなぐ言葉かけ、経験を自覚できるような適切な援助により、音楽表現を楽しみながら共通の目的を見出し協力工夫する姿が見られ、協同的な学びへとつながっていることがわかった。