抄録
本研究は、1年目の新卒保育士の「子ども理解」がどう変化したか、その変化の契機となっているものは何かを明らかにすることを目的とした。具体的には、新卒保育士3名を対象に、年度初期と年度終盤の2回、「子ども理解」に変化のあった印象的な出来事や変化をもたらした契機について半構造化面接を実施した。そこで得られた言語データをSCATを用いて分析し、年度初期と年度終盤の「理論記述」の比較から「子ども理解」の変化とそれをもたらす契機について検討した。分析の結果、年度初期の新卒保育士は、子どもの心情に寄り添いたいとの思いはあるが、「子ども理解」を行う際の具体的着目点や方法が分からないため、手探りに心情推察を行い、子どもに対し指導的で且つ安全重視の関わりを優先する傾向が示された。その後年度終盤には、目の前の子どものみではなく背景等多角的に「子ども理解」を進め、子どもの心情を踏まえた保育行為を行うとの変化がみられた。そしてこれらの変化は、熟練者の存在、異なる立場の経験、新規知識獲得等が重要な契機となることが明らかになった。