2016 年 10 巻 2 号 p. 106-111
症例は62歳女性。11年間オフセット印刷工場の廃棄物回収に従事し,印刷に使われる「湿し水」中のエッチ液の原液に接触するうち,両前腕に瘙痒性浸潤性紅斑を生じた。パッチテストにて,エッチ液と,エッチ液を構成する2成分に陽性で,これら2成分には,3種類のイソチアゾリノン系防腐剤,すなわち5-chloro-2-methyl-4-isothiazolin-3-one(MCI),2-methyl-4-isothiazolin-3-one(MI),2-n-octyl-4-isothiazolin-3-one(OIT)が2剤ずつ含まれていた。また試薬で調製したMIとOIT,および類似イソチアゾリノン防腐剤の1,2-benzisothiazolin-3-one(BIT),Kathon CGにも陽性であった。エッチ液に新たにMCIが添加されて4ヵ月後に皮膚炎を生じたことから,MCIに感作され,MI,OIT,BITにも同時に反応するようになったと思われ,交差感作の可能性も考えられた。