83歳, 女性。初診２ヵ月前より食欲低下と認知機能低下が進行し, 近医にて認知症と診断され, 初診１ヵ月前よりスルピリド (ドグマチール®) 100 mg/日の内服を開始した。約１週間後より顔面, 手指に紅斑, 口腔粘膜びらん, 37℃台の発熱が出現したため, 精査加療目的で当科を紹介受診した。血液検査所見で血球減少, 抗核抗体陽性 [homogenous : 640倍 (基準値 : < 80倍) ] , 抗DNA抗体 (RIA) 9.7 IU/ml (基準値 : < 6.0 IU/ml) , 抗カルジオリピンIgG抗体72.6 U/ml (基準値 : < 10.0 U/ml) であり, 顔面の紅斑は皮膚病理組織検査にて円板状ループスエリテマトーデスの像であった。1997年米国リウマチ学会の全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus : SLE) の診断基準を満たしていたが, スルピリド中止後, すみやかに臨床症状が改善し, 血液検査所見も正常化した。以上の経過より, 本症例をスルピリドによる薬剤誘発性ループス (drug-induced lupus : DIL) と診断した。
