2017 年 24 巻 2 号 p. 130-133
緒言:肘筋への支配神経を温存する肘頭骨切りアプローチの試みを報告する.
症例および方法:症例は16歳男性,39歳男性,48歳女性,33歳男性の上腕骨遠位端関節内骨折4例で,AO分類C2型3例,C3型1例であった.内側は通常通り上腕三頭筋内側縁を展開し,外側は上腕三頭筋外側縁の展開を肘筋上腕骨付着部近位までに留め,肘頭骨切り後,上腕三頭筋と肘筋の連続性を保ったまま近位外側に翻転することで関節面を露出する.整復後,全例double plate固定を行った.C3の1例で展開が不十分となり通常の肘頭骨切りアプローチに移行した.全例で骨癒合が得られた.
考察:肘筋は動的な外側安定性も担うとされている.従来の肘頭骨切りアプローチでは,必然的に肘筋の脱神経を生じさせており,その機能を失うことになる.肘筋を温存する臨床的意義に関しては今後の検討を要するが,肘筋の発達した運動選手などでは温存する努力を払うべきと考える.