日本肘関節学会雑誌
Online ISSN : 2434-2262
Print ISSN : 1349-7324
Ⅲ. 外傷・外傷合併症
閉鎖性肘関節脱臼に伴う橈骨神経皮下断裂の一例
市場 雄大片岡 利行安井 行彦難波 二郎
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2019 年 26 巻 2 号 p. 126-128

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抄録

【症例】症例は26歳男性で,ベルトコンベアに右上肢を巻き込まれて,右肘関節脱臼を受傷した.橈骨神経領域の麻痺を認め,近医で徒手整復を受けたが,神経麻痺について受傷後1週間で当院紹介となった.来院時には橈骨神経領域の知覚脱失を認め,腕橈骨筋以下の橈骨神経領域のMMTは0であった.肘関節では著明な内反動揺性を認めた.肘関節外側アプローチで,靭帯修復術と神経移植術を行った.外側側副靭帯,腕橈骨筋,長橈側手根伸筋は起始部近傍で断裂し,橈骨神経も完全に断裂していた.橈骨神経は腓腹神経を用いて,神経移植を行った.術後神経障害の改善を認め,術後3年現在は疼痛なく,筋力も比較的良好に回復した.【考察】一般に開放創を伴う橈骨神経断裂の報告は散見されるが,開放創のない外傷による橈骨神経断裂は稀である.受傷後改善を認めない神経麻痺については本例のような稀な皮下断裂も念頭に置き手術計画を立てることが重要である.

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© 2019 日本肘関節学会
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