抄録
2020年3月から1年余り、新型コロナウイルスが猛威を振るい、リアルな人的交流が抑制され、大学もキャンパスの閉鎖を余儀なくされた。その後も、感染状況に対応しながらインターネット環境とリアル空間での活動が併用されている。緊急措置として急激に広範に利用されたインターネットによる教授・学習は、環境整備や対応に不備は残るものの、不都合な点だけでなく、学生への個別対応が容易になり学習が促進されるなど、多くの利点も見出された。
一方、リアル・キャンパス閉鎖が長引くなかで、学生たちは不安や孤独感を訴えた。その原因の一つに、リアル・キャンパス喪失が「居場所」不在状況を生み出したことが考えられる。ことに2020年度の新入生は入学当初からリアルな大学空間の体験を経験せず、「大学での居場所」を見つける大きな機会を奪われた。
学校や大学を、安心できる場所、受容される場所、為すべき課題・目的がある場所と感じる居場所感が学校適応を支えるという研究がなされてきた。大学生にとって、リアル空間で他者や環境と相互交渉することに本質的で独特な意味があるのか。今後は大学教育の基本フォーマットとなるであろうインターネット環境で、どう対応することができるのか。
「居場所」の視点から、リアル/インターネット環境の大学空間を考えたい。