生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
Print ISSN : 1349-0443
特集:マイクロスリップ
作業の熟達におけるマイクロスリップ躊躇の生起時間の変化
安田 哲也小林 春美
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2009 年 4 巻 1 号 p. 25-30

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抄録

 作業を繰り返し熟達したときにマイクロスリップの生起に変化が生じるかについて,実験場面を撮影したデジタルビデオ映像を1フレームごとに分析する方法により調べた.作業はインスタント・コーヒー作りとし,試行の間に1分間の休憩を挟み10試行を成人の実験参加者に行ってもらった.熟達が起こったかについて,各試行における作業時間を調べ,熟達が起こっていたことを確認した.1杯作成するときに起こるマイクロスリップ生起頻度は試行を重ねるにつれて全体的に減少した.マイクロスリップのうちの1秒未満の躊躇(操作の対象物に向けられた手の動きの小停止)について,各停止時間(躊躇の生起時間)間隔における頻度と試行回数との関係を調べたところ,1,2杯目では停止時間が1秒近くと長いものから0.1秒近くと短いものまで幅広く分布していた.9,10杯目では停止時間が長いものは皆無となり,短い時間のものだけとなっていた.これらの結果から,熟達が進むとマイクロスリップの頻度は減少すること,特に停止時間の長い躊躇が減少する一方,停止時間の短い躊躇は試行を重ねても残ることが確かめられた.

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© 2009 日本生態心理学会
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