日本中央競馬会競走馬保健研究所報告
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新たに考案した固定法による第一指骨種子骨々折の治療例
妹尾 俊彦
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1961 年 1961 巻 1 号 p. 153-159

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抄録

1. 内外両側の種子骨が,同時に骨折したアラブ系競走馬一頭について,腕関節以下を背側の鉄唇に牽引し,球節以下を伸展させるように工夫した固定具を使用して治療を試み,その経過を観察した。2. 患馬は保定することなく,馬房内に放置した。3. 固定具は31日間装着した。4. 固定具除去後の静養期間は84日であつた。5. 治療開始後125日のレ線診断の結果は,骨片が完全癒着し,骨折部に発生した贅生組織の量も極めて少なく,歩様は正常であつた。6. 遠隔所見として7ケ月後の状況を調査したところ,約100mの駈歩を含む騎乗運動に極めて軽`年後の今日では競走馬としての供用に耐えるものと考えられる。7. 解剖学的な球節繋提装置の構築の特徴を考慮した本固定法は,ギプスあるいは副木による固定包帯に現れ易い欠陥を是正し得て,長期間の横臥安静を保つことの困難な馬に採用して,極めて良好な結果をうるものと思考される。稿を終るにあたつて,御指導を賜わつた東京大学労役生理学教室野村博士に謝意を表わします。なお,実験馬を寄贈された矢野幸夫調教師,困定具の作成とレ線撮影に協力された古賀郡一氏,池本元一氏7小山内治登氏,看護と調教の担当者高山友三氏に御礼を申し上げます。

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