日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
Online ISSN : 1884-4626
Print ISSN : 0386-4634
ISSN-L : 0386-4634
サラブレッド種の血清中トコフェロールの高速液体クロマトグラフィーによる分析
渡辺 博正藤井 良和市川 文克仁和 勝広山本 剛
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 1982 巻 19 号 p. 51-58

詳細
抄録

サラブレッド種に多発する筋障害の原因究明の一方法として, 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) による血清中のトコフェロール (tocoph.) の定量法を検討した。この定量法は, 高い感度, 直線性の高い検量線, 良好な再現性および純品標準添加法における高率な回収率によって精度の高い分析法であることが認められた。このHPLCにおいて, すべての材料にα-tocoph. が認められ, サラブレッド種の血清中濃度は, ヒトの1/3-1/4であった。これは, 食物および飼料中のtocoph. および不飽和高級脂肪酸の含有量も関連しているのではないかと考えられた。サラブレッド種競走馬・育成馬の血清中α-tocoph. 濃度は, 同品種の乗馬より低値であった。今回のHPLCによるtocophの分析において, β-及びδ-tocoph. 標準品と同一のカラム保持時間をもつピークが, 一部の材料のクロマトグラムに認められた。ところが, 現在検討中のHPLCによるtocoph類及びビタミンAの同時定量において, ビタミンAの変質物とβ-tocoph. 標準品のカラム保持時間が等しいことが認められた。このような問題について今後のさらに詳細な検討が必要であるが, HPLCによるtocoph. 分析は生体に重要なα-tocoph. を直接定量できる利点および高い精度をもつことから, 馬のtocoph. の欠乏あるいは吸収障害等の検討に適した方法であると考えられた。筋疾患治癒例の一部に血清中α-tocoph. の低値が認められ, 馬においてもtocoph. は筋障害に関与することが示唆された。

著者関連情報
© 日本中央競馬会 競走馬総合研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top