日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
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馬における薬物体内動態論に基づく硫酸キニジン経口投与法の検討
倉兼 英二天田 明男
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1982 年 1982 巻 19 号 p. 59-68

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抄録

馬の抗不整脈薬として繁用されている硫酸キニジンの経口投与法を薬物体内動態論的に検討するために, つぎの3種の実験を行なった。なお, 実験には7頭の健康な軽種馬 (体重430-505kg, 雄5頭, 雌2頭) を供試した。実験1. キニジンの薬物動態値を求めるため硫酸キニジン40mg/kgを1回経口投与し, 血中濃度の推移を抽出-蛍光法により測定した。血中濃度は投与後約2時間で最高濃度 (平均2mg/l) に達し, その後漸減した。この血中濃度推移は, 半対数グラフ上でほぼ直線的であったことから, キニジンの体内動態は1コンパートメント・モデルで考えることができた。その結果, 生物学的半減期 (T1/2) は8.1±0.91時間, 除去率恒数 (k) は0.09±0.010h-1, 体内分布容積 (Vd) は (15.1±1.54) ×f・1/kg (但しfはキニジンの有効利用率) の薬物動態値が得られた。実験2. あらかじめ2種のキニジン平均血中濃度 (1.8mg/lおよび1.4mg/l) を設定し, 実験1で得られた薬物動態値から, それぞれの血中濃度を維持するための投与量を算出し, 設定値と実測値が一致するかどうか検討した。その結果, 1.8mg/1の設定濃度では, ほぼ設定どおりの実測値が得られたが, 1.4mg/1の設定濃度では18-25%低い濃度であった。実験3. 馬の心房細動治療のために広く用いられているDetweilerらの投与法の第2日目の投与 (10g×3, 3時間間隔) における血中濃度の推移を知るために投与実験を行なった。その結果, キニジン血中濃度は投与ごとに階段状に上昇し, 3回目の投与後には2.5-5.0mg/lまで達した。以上の結果をもとに, 硫酸キニジンの経口投与法について薬物体内動態論的に若干の考察を行なった。

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