日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
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育成期の馬の至適放牧地条件
3. サラブレッド種育成馬の行動からみた放牧地形状の得失
楠瀬 良畠山 弘市川 文克沖 博憲朝井 洋伊藤 克己
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1987 年 1987 巻 24 号 p. 1-5

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抄録

育成期の馬の放牧飼養に適した放牧地の形状を知ることを目的に, 面積は同一で縦横の長さの比の異なる四角形の放牧地に育成馬を放牧し, そこでの馬の行動を指標として比較検討を行った. 供試放牧地としてそれぞれ面積が2.4haで縦横の比が1:1のA放牧区, 1:2のB放牧区, 1:4のC放牧区の3面を設定し実験に用いた. 実験には14-16ヵ月齢のサラブレッド種育成馬雌雄6頭づつ, 計12頭を用いた. 雌雄別に6頭を1群とし, 各放牧区に毎日7時間放牧し, 行動観察を行った. 総移動距離は各放牧区とも平均5000m程度で差は認められなかった. 各放牧区でみられた駆歩を転回角度を基準にタイブわけし, 生起頻度を比較したところ縦横の長さの差の大きい放牧区ほど転回角度の大きい駆歩が増加する傾向が認められた. その生起頻度にはA放牧区とC放牧区との間に統計的に有意な差が認められた (P<0.05). また駆歩の停止した地点は, 放牧区の縦横の長さの差が大きくなるに従って放牧区の周辺部にかたよってくる傾向がみられ, C放牧区においては生起した駆歩の半数以上が牧柵から10m以内の地点で停止した. 馬の通過距離からみた放牧地の利用のしかたはA放牧区では比較的均一なのに対して, 縦横の長さの差が大きくなるに従って不均一になった. 以上の結果より2ha程度の放牧地に育成期の馬を放牧飼養する場合, 放牧地の形状は, 安全性ならびに放牧地の利用効率の観点から, 縦横の長さの差が少ないほうが有利であると考えられた.

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