抄録
ゴム製品は,硫黄等の加硫剤を用いて架橋する代表的なネットワークポリマーである。そのゴム製品に,同じネットワークポリマーであるフェノール樹脂を配合して補強する手法は古くから知られており,ゴム物性向上に大きな役割を担ってきた。フェノール樹脂と硬化剤(ヘキサメチレンテトラミン,等)をゴムに配合して,ゴムの加硫工程中にフェノール樹脂を硬化させ,ゴムの加硫によるネットワーク構造に加えてフェノール樹脂のネットワーク構造を形成することで,ゴム製品の硬度,弾性率,強度,等の諸物性が向上する。このため,ゴムとフェノール樹脂の相溶性,分散,ネットワーク構造を議論する事は重要である。本稿では,ゴム製品の主要な用途である自動車用タイヤでのフェノール樹脂によるゴム補強について総説した。タイヤの要求特性に対して,最近のフェノール樹脂および硬化剤等の周辺技術の開発状況と,フェノール樹脂によるゴム補強メカニズムの解明への取り組み,ネットワークポリマーの今後の課題の一つであるリサイクル技術,今後の技術開発動向について解説する。