Journal of Equine Science
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日本在来馬におけるDNAフィンガープリント分析
山下 秀次村田 修治郎小村 喜久男岡本 新前田 芳實橋ロ 勉
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1994 年 5 巻 4 号 p. 115-120

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抄録
日本在来馬におけるDNAフィンガープリント分析を行い,品種内における遺伝的変異性について検討するとともに,品種相互間の遺伝的類似性について分析を行い,それにもとづいて遺伝的距離を推定した.供試馬には,サラブレッド,トカラ馬および野間馬を用いた.DNAは末梢血より抽出し,制限酵素.Hnf Iにより切断した.DNAフィンガープリント法は,(TG)nプローブをジゴキシゲニン標識し,コールドプローブ法により行った.DNAフィンガープリントの遺伝的類似性の評価には,BS値を算出した.また,遺伝的距離の推定には,BS値より算出したサイトあたりの塩基置換数を用い,さらにこの結果から非加重結合法によってデンドログラムを作成した.各馬種内におけるDNAフィンガープリントの個体一致確率は2.1×10-1(トカラ馬),4.0×10-4(野間馬)および3.6×10-5(サラブレッド)と評価された.また,馬種間のBS値に比べて馬種内のBS値が高く評価された.特にトカラ馬内のBS値は他の2馬種に比べて非常に高いことが示された.さらにBS値にもとづくデンドログラムによる分析の結果,3馬種ともにそれぞれ独立したクラスターを形成し,トカラ馬が他の2馬種から遺伝的に大きく離れていることが示唆された.以上のことより,トカラ馬の遺伝的変異性は著しく低いことは明らかである.このことはトカラ馬集団が少数の小型馬を起源とし,現在までに何度かの集団サイズの縮小を経験しているために,多型的な座位に遺伝子頻度の機会的変動あるいは遺伝的浮動が強くあらわれたためと考えられる.
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