2018 年 18 巻 01 号 p. 36-51
本研究は,小学生を対象とした語彙サイズテストを開発する前段階として,小学生のための受容語彙リストの作成を目的としたものである。その過程から,データソースの対象とした8種類の教材の特徴を語彙の面から考察し,小学生の語彙知識を反映する可能性のある語彙リストとは,どのようなものかを明らかにする。そのため,Hi, friends!,『英語ノート』,教室英語辞典,中学校検定教科書,絵本に加え,Picture Dictionary,L1 児童用教材,L1 児童用語彙リストの言語データからコーパスを構築し,そのFrequency(頻度)とRange(使用範囲)を基に主成分分析を行い,第1主成分得点から小学生のための受容語彙リストを作成した。また,特徴語の分析やクラスター分析の結果から,Hi, friends!や『英語ノート』,中学校1年生用の検定教科書においては,一人称と二人称の主語,please やlet’s,hello やhi などの表現が多いこと,絵本には,一般的な語彙リストには高頻度で出現しない,様々な名詞が出現していること,機能語の頻度が特徴的に低いことが,小学生用の教材と一般的な英語の違いであり,さらに,Hi, friends!や『英語ノート』,中学校1年生用の検定教科書などの日本の教材と,絵本やPicture Dictionary,海外のリーディング教材とを分ける要因ともなっていることが明らかになった。機能語をどのように扱うかが小学校英語の指導における課題であることが示唆された。