2024 年 2024 巻 1 号 p. 210-225
俣野 知里(京都市立二条城北小学校)泉 恵美子(関西学院大学)
キーワード:探究的実践,専科教員,教員研修
2020 年度より外国語が教科となり,指導体制として専科教員が単独で,あるいは外国語指導助手
(ALT)や担任(HRT)とティーム•ティーチングで指導することが多くなった。そのような中,専科教員が抱える不安や課題は非常に大きいことが,専科教員に関するこれまでの調査結果から浮き彫りになってきた(俣野•泉,2021;俣野,2022;俣野•泉,2022)。それらを踏まえ,教員の成長を促す研修の在り方について示唆を得ることを目的として,2022 年 11 月~2023 年 4 月にかけて,ICT を活用した探究的実践(Exploratory Practice:以下,EP)を行った。EP には,4 名の教員と筆者 2 名が参加した。EP についての説明を筆者らから聞いた後,各自のパズル(自身の授業や指導などに関する現状や悩みから生まれた問い)を設定して EP に取り組んだ。また,互いの EP の過程を Zoom によるオンライン交流会や Google Chat への書き込みにより共有した。研究の事前事後には,協力者の教員生活の質(Quality of Life)に対する評価がどのように変化するかを測る指標として,SEIQoL(Schedule for the Evaluation of Individual Quality of Life)を用いた。本論文では,その中でも特に初任外国語専科教員に焦点を当てて,半年間にわたる変容を質的に分析した結果,パズルを探究する中で,学校内外の他者と協働的対話を深め,自身の学習者としての経験や知識から教員としての理解や行動に変わっていく中で,気付きや自信を獲得しながら大きく成長することが示唆された。
近年,小学校外国語教育の担当者として一定の割合を占めるようになった専科教員に関する調査•研究から,多様な背景をもつ専科教員の存在や専科教員による指導の利点•課題等が明らかにされつつある(例えば,JES20 周年記念誌編集委員会,2020; ELEC 教員研修部,2021; 俣野•泉,2021;俣野,2022;俣野•泉,2022)。小学校外国語教育の指導体制に関する資料(文部科学省,2020)では,中期的な方向性として,小学校教員全体の外国語指導力の向上を図るとともに,専科指導を担当できる一定の英語力を有し,より質の高い英語教育を行うことができる人材の採用も計画的に進めることが示されており,専科教員による指導の充実は,小学校教員全体の外国語指導力の向上にも資する可能性が示唆される。課題とされる専科教員の孤立感の解消や研修の在り方に関しては,既に多くの自治体で検討されているものの,多様な背景や勤務形態の中で指導にあたる専科教員に対する研修には,
内容の決定や時間の確保等に難しさもある(俣野,2022)。
本研究では,専科教員 1 に関するこれまでの研究結果を踏まえ(俣野•泉,2021;俣野,2022;俣野•泉,2022;俣野•泉,2023),教員の成長を促す研修の在り方について示唆を得ることを目的として行った EP と小学校外国語教育の指導者の変容について報告する。
今後の教育の方向性を示す Education2030 におけるラーニング•コンパスの中亥的概念として「エージェンシー(student agency)」が示され,それらは生徒一人だけで育まれるものではなく,周囲との関係性の中で育まれていくものであることから,共同エージェンシー(co-agency)の重要性が示されている(白井,2020)。共同エージェンシーは,「教師や生徒が,教えたり学んだりする過程において共同制作者(co-creators)となった時」に生じ,「共同してエージェンシーを伸ばすためには,教師自身も,これまで以上に成長していくことが求められる」とされている(白井,2020)。
Calvert(2016)は,教師のための継続的な教育を Professional Development ではなく,Professional Learning と呼び,教師を成長の主体者として認識し,学習は学習者によって大きく左右される経験であることを強調した。その上で,Professional Learning の文脈における教師の主体性とは,「教師が自らの専門的成長を方向付け,同僚の成長に貢献するために目的意識を持って建設的に行動する能力
(p.52)」とし,主体性を持つ教師は,学習の機会に受動的に対応するのではなく,専門的な成長における自らの役割を自覚し,目標を達成するために学習の選択を行うと述べている(Calvert,2016)。この考えは,今後の小学校外国語教育における教員研修の在り方を考えるにあたり,一つの視座となる。筆者らは,近年,小学校外国語教育の担当者として一定の割合を占めるようになった専科教員に関 する研究を通じ,専科教員の現状や認識,教員研修の在り方等を検討してきた。小学校外国語専科教員や管理職,行政の外国語教育担当者を対象とした調査(俣野•泉,2021;俣野,2022,俣野•泉, 2022)からは,多様な背景をもつ専科教員の存在や,専門性の高い専科教員による指導が一定の効果を上げていると捉えられていることが明らかになった一方,孤立感の解消や研修の在り方に課題があることが示された。教師の専門家としての学びや成長にとって何よりも重要なことは,教師は一人で学び成長しないということであり,教師が学び成長するためには専門家の学びの共同体(professional learning community)が不可欠であることを踏まえると(佐藤,2015),校内に同じ立場の同僚がいない場合が多い専科教員にとって専門家の学びの共同体を構築することは,大変重要であると考えられる。また,専科教員の採用制度に関わり,萬谷(2021)は,英語力だけでなく,小学校教育の十分な理解,児童理解の力等を,専科教員の資質要件として制度に反映する努力が求められると述べている。しかしながら,現状では自治体内で専科教員の採用と研修を担当する部署が異なることもあることから(俣野,2022),採用された専科教員に対する研修の重要性が増している。一方で,多忙な教育現場の現状を踏まえると(俣野•泉,2020),教師の主体性が発揮され,自らの学びや成長へとつなげるに
は,それらを実現する持続可能な仕組みについて検討することも非常に重要であると考えられる。
「教師の成長」を学校現場における教師の専門職的かつ人間的成長として考えるならば,教師の成長を第一に考える研修などにおいては,英語教育界は EP を最優先するべきという柳瀬(2008)の指摘を踏まえ,現状に即した教員の成長を促す仕組みとして,EP を用いた教員研修の可能性を検討する
こととした。EP は,“A way of getting teaching and learning done so that the teachers and the learners simultaneously develop their own understanding of what they are doing as learners and teachers (Allwright, 2006, p.15). ”と定義され,中心となる7 つの原則が次のように示されている(Allwright & Hanks, 2009)。
EP は,研究と教育学を統合する実践者研究の独自のかたちとして,近年,注目を集める(Hanks, 2017)。理解のための内省(Reflective Practice)と変革のための行動(Action Research)のちょうど中間に位置 し,理解のために行動を起こすことに焦点が当てられている(Allwright,2001)。EP は,研究と実践の「パズル(問い)が生まれる」,「共同的な実践の研究」,「理解の深化」の 3 つの過程から成り,理解の深化を目的とする(大学英語教育学会ら,2020)。
このような EP の考え方は,教員の成長を促す新たな仕組みを検討する上で重要な視点であると考え,俣野•泉(2023)では,約半年間,6 道府県の公立小学校の外国語専科教員 6 名の協力を得て, ICT を活用した EP を試みた。EP が協力者にどのような影響を与えるのかについて検討した結果,6名の協力者が EP の過程を通じ,自らの考えを言語化し,メンバーと協働的対話を重ねることで一つの共同体へと変容する様子が見られた。また,勤務校が異なってもオンライン上での記述や対話を通じて同僚性や協働性が構築され,各自の指導の充実や成長に資する可能性が示されるとともに,多忙な中でも持続可能な取組となることが示唆された。
しかしながら,ICT を活用した EP について,日本の英語教育における初等段階での事例は未だ報告されておらず,さらなる検討を重ねることで,より多くの示唆が得られると考え,EP の実施形態等を再検討した上で新たな EP を実施することが有効であると考えた。そこで,本研究では,小学校外国語教育における指導者の成長に資する研修の在り方について示唆を得ることを目的とし,研究課題
「ICT を活用した EP は,小学校外国語指導者にどのような影響を与えるのか」を設定した。なお,本稿では,紙幅の都合上,初任の外国語専科教員の変容に焦点を当てて報告する。
協力者は,4 道府県の公立小学校にて外国語の指導を担当する教員 4 名である。各教員の属性は,
表 1 の通りである。教員 A は,単独校に勤務する専科教員,教員 B,D は複数校に勤務する専科教員で,いずれも第 3~6 学年の外国語活動•外国語の指導を担当している。教員 C は,第 5 学年の学級担任で,授業交換により,自学級と同学年他学級の外国語の指導を担当している。協力者の勤務年数,外国語教育の経験年数ともに,1~35 年であった。
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A | 単独校勤務の専科教員 |
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B | 複数校勤務の専科教員 |
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学年内の専科教員
(学級担任•授業交換で他学級も指導)
5 18 15
D 複数校勤務の専科教員 3~6 35 35
2022 年 11 月~2023 年 4 月にかけて,ICT を活用した EP を行った。EP には,4 名の教員と第一筆
者(専科教員としての経験をもつ小学校学級担任)と第二筆者(大学教員)が参加した。協力者である4 名の教員は,筆者らが SNS を通じて本 EP への協力者を募集した際の応募者であり,教員C のみ,筆者らとこれまでに面識があった。
第 1 回のオンライン交流会にて自己紹介を行い,筆者らから EP についての説明を聞いた後,各自のパズルを設定して EP に取り組んだ。また,互いの EP の過程を Zoom によるオンライン交流会(表
2)や Google Chat への書き込みにより共有した。Google Chat については,協力者全員に利用経験がなかったため,初回のオリエンテーションの際に使用方法を確認し,その後利用を開始した。なお,オンライン交流会の様子は動画で記録し,参加できなかった教員が後日視聴することで,共通理解を図った。また,Google Chat には,協力者全員が利用できるスペースと各教員のスペースを作り,自身のスペースにEP の記録を残したり,互いのスペースへ感想や質問等を書き込んだりできるようにした。本研究の実施に先立ち,倫理的配慮として,①本研究への参加は任意で,参加しない場合も不利益 を受けることはないこと,②同意はいつでも撤回できること,③オンライン交流会の様子は,欠席者との情報共有や内容の正確な理解のため録画されること,④録画を拒否できること,⑤個人情報は匿
名化され適切に管理されることについて文書と口頭で協力者に説明し,文書で参加の同意を得た。
表 2 オンライン交流会(全 5 回)の概要と協力者の参加状況
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第 1 回のオンライン交流会を欠席した教員 C と,第 2 回のオンライン交流会に約 10 分遅れて参加した教員 A には,他の協力者の同意を得て,当該回のオンライン交流会の様子を記録した動画を共有した。なお,教員 D は,体調不良により,第 2 回のオンライン交流会までの参加となった。
EP の 7 つの原則(Allwright & Hanks, 2009)では,「生活の質」を最優先にするとされていることか
ら,本 EP を通じ,協力者の教員生活の質(Quality of Life)に対する評価がどのように変化するかを測る指標として,SEIQoL(Schedule for the Evaluation of Individual Quality of Life)を用いることとした。 SEIQoL は,個人の生活の質評価法と訳され,個人の生活の質(individual Quality of Life)を評価(evaluate)
するための計画(schedule)であり,半構造化面接法と VAS (Visual Analog scale)による評価法により成り立つ。また,SEIQoL は,WHO が推奨し世界各国で使われている生活に関する代表的なPRO(Patient reported outcome:患者の報告するアウトカム)であり,包括的な QOL(生活の質)評価法の一つとされている。主に医療分野を中心として,慢性疾患,難病,緩和ケア領域における QOL 評価方法として使われている(SEIQoL-DW 日本語版事務局および SEIQoL-DW 日本語版ユーザー会,2013)。そのうち,SEIQoL-DW2(a Direct Weighting procedure for Quality of Life Domains)(大生•中島,2007) は,生活の質のドメインを直接的に重み付けする方法として用いられ,面接者からの質問に答えるかたちで,「生活の中で,最も重要な 5 つの領域」(キュー),「満足度」(キューのレベル),「重要度」(5 つのキューの相対的な重み)を自己評価する。満足度と重要度の積の和が QOL 値(SEIQoL-DW index)として算出される。筆者らは,SEIQoL-DW を使用する上で必要な講習を受講し,本研究にて用いた。
本 EP におけるパズルの探究やメンバーとの対話等を通じ,教員 A が変容する過程を明らかにする
ことを試み,Zoom によるオンライン交流会での語り(音声•動画データ),Google Chat 個人のスペース内の書き込み(記述データ),SEIQoL-DW を用いた個別面談での語り(音声•動画データ)をリースマン(2014)におけるナラティブ分析を参考に分析した。また,QOL に関する評価については, SEIQoL-DW index(数値データ)を分析した。なお,分析は,2 名の筆者により行った。
研究課題について多角的に検討するため,教員 A の EP の記録と QOL の評価に分けて報告する。なお,本研究では,さらに研究を進めるためのアイデアの開発を目的とした探索的ケース•スタディとして(イン,2011),参加者同士の視点を共有することで,自身の省察が促され内的な変容が見られた教員 A のケースに焦点を当てることとする。
4 名の教員が設定したパズルとその設定理由は,表 3 の通りである。パズルや設定理由については,協力者の記述を元のまま引用し,括弧内は筆者による加筆を示す。また,勤務地が特定される箇所のみX 市と表記した。
表 3 4 名の教員のパズルと設定理由
教員 パズル 設定理由
なぜ私は(児童の)振り返りに意味がないと感 振り返りを毎度の授業で行いつつも,自分の中で納得感がなか
じているのか。
ったため。
なぜ,Small talk の活動で英語でやりとりするこ今勤めている市の加配教員連絡会での研究テーマが Small talk
とができた!と思えない児童がいるのか。
を通した言語活動で,研究をすすめていて,自分自身も今の小学校に来て,その場でのやり取りに自信を持てずにいる子どもたちの実態を見て,それについて実践を通してより理解を深めたいと思ったから。
なぜ,やりとりには果敢に挑めるのに,発表にやりとりには,果敢に挑戦できるが,発表へは苦手意識が強い。は消極的になる(児童がいる)のか。
授業に近づこうとしないのか。
境の中で楽しく外国語の授業を行いたいと考えたからです。また,X 市は専科に対しては協力的でないと感じているので,いろいろな角度からパズルを解いていきたいと思う。
教員 A は,単独校に勤務する初任外国語専科教員で,第 3~6 学年(各学年 4 学級)の外国語活動•
外国語の指導を担当している。所属校には,2 名の ALT,1 名の英語指導を補助する教員が曜日によって週 2~3 回交代で配置されており,教員 A といずれかの指導者によるティーム•ティーチングにより授業が行われていた。教員 A は,大学と大学院にて英語教育を学び 2022 年 3 月に大学院を修了,中高の英語科教員免許を保有している。2022 年 4 月,大学院修了まで過ごした地から離れた別の地方の小学校へ赴任し,外国語専科教員として初年度の勤務を始めた。赴任した地方にはそれまで訪れたことがなく,赴任当初は周囲に面識のある人が一人もいない状況であった。勤務する自治体内には,教員 A を含め 5 名の専科教員がおり,教員 A 以外は,複数校勤務の専科教員であった。専科としての専門性を高めたい,他の専科教員とつながりをもちたいという動機から,本 EP に参加した。
教員 A は,「振り返りを毎度の授業で行いつつも,自分の中で納得感がなかったため」,「なぜ私は
(児童の)振り返りに意味がないと感じているのか」というパズルを設定した。オンライン交流会への参加状況や Google Chat への書き込みは,表 4 の通りである。
表 4 教員A のオンライン交流会への参加状況や Google Chat への書き込み
日 内容
2022 年 11 月 6 日 第 1 回オンライン交流会(オリエンテーション)
2022 年 11 月 14 日 Google Chat への書き込み 1(教員D のスペースへの書き込み)
2022 年 11 月 26 日 Google Chat への書き込み 2(自身のスペースへの書き込み)
2022 年 11 月 26 日 Google Chat への書き込み 3(教員D のスペースへの書き込み)
2022 年 12 月 2 日 Google Chat への書き込み 4(自身のスペースへの書き込み)
2022 年 12 月 2 日 Google Chat への書き込み 5(自身のスペースへの書き込み)
2022 年 12 月 2 日 第 2 回オンライン交流会(パズルの共有)
2022 年 12 月 27 日 第 3 回オンライン交流会(進捗の報告)
2022 年 12 月 27 日 Google Chat への書き込み 6(自身のスペースへの書き込み)
2022 年 12 月 28 日 Google Chat への書き込み 7(教員C のスペースへの書き込み)
2022 年 12 月 28 日 Google Chat への書き込み 8(自身のスペースへの書き込み)
2023 年 2 月 17 日 第 4 回オンライン交流会(進捗の報告)
2023 年 2 月 17 日 Google Chat への書き込み 9(自身のスペースへの書き込み)
2023 年 3 月 23 日 Google Chat への書き込み 10(自身のスペースへの書き込み)
2023 年 4 月 3 日 第 5 回オンライン交流会(最終報告)
2023 年 4 月 8 日 Google Chat への書き込み 11(自身のスペースへの書き込み)
く2022 年 11 月 6 日 第 1 回オンライン交流会(EP の説明•メンバーの自己紹介)>
教員 A は,現在の勤務状況について紹介した後,次のように語っている。なお,教員 A の語りは元のまま引用することとし,括弧内については,筆者による加筆を示す。
A:大学,大学院と進学して,今年教員としても 1 年目で,いろいろ探り探りやっているというところです。私自身,中高の英語の免許を持ってるんですけれども,小学校に勤務するっていうことはですね,大学院時代,大学大学院と言語教育を勉強してたんですけど,その間もあんまり想定してなかったので,もう小学校の専科で何をしたらいいのかっていうところから迷いつつ,今,半年ぐらいやっているというところです。なので,わからないことだら
けでいるんですけれど,どうぞよろしくお願いします。
修士課程まで英語教育について学び,中高の英語科教員免許をもっていたものの,小学校での勤務は想定外であり,戸惑いながら実践を重ねている様子が推察される。このことは,小学校における外国語教育では,高い英語力を有するだけでなく,小学校教育についての十分な理解や児童理解の力が重要であるという萬谷(2021)の指摘とも重なる。
く2022 年 12 月 2 日 第 2 回オンライン交流会(パズルと設定理由の交流)>
教員 A は,児童の「振り返り」に関するパズルを設定しようと考えていることについて次のように述べており,第 1 回オンライン交流会の後,Google Chat 上で教員 B から質問(図 1)を受けたことが,自己の課題意識や目指す指導の在り方を明確にしたいという思いの高まりにつながっていると考えられる。
A:B 先生から「どういう内容を書いて欲しいと思っているか」っていう質問をいただいたのを踏まえて,なんかこう,自分が今,どういう課題感とか,どこを目的としているのかっていうところを,ちょっと一回はっきりまとめたいなと思って。
図 1 Google Chat 上での教員 B からの質問
その後,振り返りに取り組むようになった経緯やそれに対する思いを語った。
A:私自身がこの 4 月から振り返りを始めたのは,専科の教員として授業に入って,振り返りするんだなと思って振り返りしてるんですけど,あんまり建設的じゃないなあと思いながらここまでやってきていて。自分自身が考えている振り返りの目的としては,児童の学習改善につなげるっていうところと学びに向かう力,主体性の評価材料というところと,あと授業の理解度とか感想を把握して,自分の指導改善に役立てるっていうところを目的として振り
返りをしたいなというふうに考えています。
続いて,自身が感じている課題について次のように報告した。
A:児童が自らの学習を振り返って学習改善に繋げるっていうところと,あと学びに向かう力,主体性の評価材料としても,こう不十分というか。[…]で,この評価材料としてっていうところは何というか,結局,付随してくるものだと思うので,1 つ目の児童がどうしたら自ら学習を振り返って学習改善につながるような振り返りにできるだろうかというようなところをパズルとしてもってきたいなというふうに思っています。
教員 A の報告を聞いた教員 B は,自身も振り返りを大事にしており,教員A のパズルに関心をもっていたと述べ,児童と共にどのように振り返りをするとよいかを一緒に考える時間をもつのも,振り返りの 1 つではないかと提案した。
く2022 年 12 月 27 日 第 3 回オンライン交流会(進捗状況の交流)>
教員A は,Google Chat 上の記述を示しながら(図 2),自身の理解について次のように語った。
図 2 Google Chat 上の教員 A の記述
A:パズルの文言とか,どうして自分がここを疑問に思ってるのかなってところを考えた時に,ちょっとひとまず自分自身が探究したいなと思ったところが,[…]どうして私は,児童の振り返りに,今,意味が,十分,こうなんて言うんですか,十分に活用できていないというか,そういう意味で意味がないと感じているのかっていうところを,どうして自分はそういうふうに感じてるんだろうかっていうところをちょっと改めて考えてみました。
その上で,「振り返ってほしい観点が自分の中で不明確」,「自分の中で,現在やっている振り返りの意義が不明」という点に関わり,次のように述べている。
A:振り返り項目の設定に時間がかけられてないっていうのが繋がってることなんですけど。振り返りを通じて何をして欲しいのかとか,なぜ振り返りをしているのかみたいなところが自分に腹落ちしていないんだなあというのをすごく感じているところです。
加えて,新たに 2 種類の振り返り(隣の人と話してみるかたちでの振り返り•アンケートフォームを活用し,友達の記述を参考にすることもできるかたちでの振り返り)を試みたものの,未だに納得感が得られないことを吐露した。
A:振り返りの手法的なところはいくつかトライしてみたんですけど,結局,この根幹の部分っていうか,振り返り項目のところの,納得感がないまま,結局,2 学期の最後まできてしまったので,ちょっとその辺りのところをちょっとどうしていったらいいのかなって今行き詰まっているところです。
これに対し,教員 B は,振り返りの項目について質問をし,教員 A の発問や振り返りの項目が大事なのではないか,またそれが,教員 A の腹落ちにつながるのではないかと述べた。また,教員 C は「偉いなと思います。一番最後のビッグクエスチョンですよね。」と教員 A に共感し,自身の経験を詳細に紹介した上で,評価計画を自分で立てておけば,振り返りで書いてもらいたい部分も自ずと見えてくるのではないかと提案した。このような,専科教員としての視点にもとづく質問や共感,提案などは,同じ立場の同僚がいない校内では生まれにくい(俣野•泉,2022)。しかし,ICT を活用することで,同じ立場の同僚と対話することが容易となり,教員 A のパズルに対する理解の深化を促したと考えられる。
く2023 年 2 月 17 日 第 4 回オンライン交流会(進捗の交流)>
教員 A は,前回のオンライン交流会以降に試した 4 つの振り返り(対話,教科書付属の振り返りシート,学校独自の振り返りシート,教科書付属の振り返りシートの Google Forms 版)と児童の反応,メリット•デメリット等を紹介した。なかでも,次の語りからは,指導経験の有無と児童の反応を予想することの難しさが関連していることがうかがえる。
A:私にとって特にデメリットと思ってるのが,単元ごとにシートを配るっていう[…]一年目でその単元やってみる感じがわからない段階で,質問項目を設定した状態で配ってしまうと,すごく,こういうふうに反応するんだとかっていうのが全然予測がつかないところがあって。単元開始前に質問項目を設定するってところに自分は難しさを感じてるなって言うのが感じたところです。
その後,第二筆者が,児童の声はどうだったかを尋ねたところ,「アンケートというかたちは取ってないんですけど,質問をして挙手してもらうというかたちでざっくりみたんです」との返答があり,持続可能なかたちで EP を進めていることや児童も EP に参画している様子が見て取れた。
また,教員C の報告を聞いた後には,教員 A から,教員 C の考え方を参考に実践を進めた際の手応えや自身の大学時代の経験が語られ,次のような気付きが共有された。
A:言いたいことがある,言えることがあるっていう状態にいかにもっていくかっていうのが大事なのかなっていうのをちょっとすごい色々考えながら伺ってました。ありがとうござい
ます。すごい勉強になったので。ありがとうございます。自分の教室にいかさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
く2023 年 4 月 3 日 第 5 回オンライン交流会(最終報告)>約半年間の EP を振り返り,次のように語り始めた。
A:振り返りに意味がないと感じるのはなぜかというところで,結局,どうしてそう感じているのかっていうところは,児童の学びに繋がっていないのではないかと不安だからっていうところが,まあ端的に言うと,こういうところなのかなっていうのを半年いろいろ考えていて思いました。そもそも,じゃあなんでいつも児童の学びに繋がってないと考えるようになってたかっていうと,少なくとも半年前の時点で,あんまり振り返りが書けてない児童が一定数いるっていうところ。[…]あと,振り返りでやっぱり書くことが主な活動の形にな
っていて,書くことが苦手な児童にとっては学びにつながってないんじゃないかなっていう。そういう書くのが苦手な人に,子供にとって,よりよい振り返りってなんだろうみたいなこ とを考えていたっていうのがあるのかなと思います。
そして,そのような考えから,半年間,さまざまな振り返りの方法を試したこと,第 6 学年最後の授業で児童の声を聞き,興味深く思ったこと等が紹介された。また,問いを工夫することの大切さにも気が付いたとし,大学院時代に自身が学習者として学びを進めてくれると感じていた振り返りを示し,「その経験がすごく自分の振り返り観みたいなものに影響してるなっていうことを思いました」と語った。さらに,EP を通じた気付きを次のように報告した。
A:最初に[…]あんまり振り返り書けてないからとかっていうことを表面的には感じてたん ですけど,よく,なんか自分で内省してみると,自分自身が小中学生の頃には,授業のまとめとか行事が終わった後に書く振り返りについて,あんまり意味があると思ってなかったし,なんで書かされるんだろうみたいな気持ちでいたっていうこの経験が,自分が,今回振り返りに対して違和感を持つ,最初の,こうなんていうんですかね,原体験みたいになってるなあっていうふうに気付きを得ました。結局,今回振り返りについて探求してきて,最終的に自分が一番気付いたことというのは,なんかその自分自身,学習者だった,ついこの間まで学習者だったっていうところから,教えるっていうことをするというか,教師っていう立場になって,その転換の中で,振り返りに関して,その学習者としての立場での疑問とか,自分自身の個人的な,[…]学習者としての感覚が,なんかすごく強く影響してたなあって
いうことをこの EP ですごく気が付いたことかなっていうふうに思っています。
その上で,EP を通じ,さまざまな試みを行った結果,「自分がこういうふうな振り返りをして欲しいなって思っていることに近づいてきてはいる」とし,次のようにまとめた。
A:結局,最初にすごく強く感じた違和感みたいなものは,結局,自分自身が学習者の時,自分が子供のときの感覚から抜けきれないままでいたところが,すごく大きく影響していたのかなっていうところに気付いて。今は,そんなに振り返りについて,すごく強く意味がないというふうに思っていないんですけど。ちょっとずつ 1 年経って貫れてきて,立場が変わっていくみたいなところ,自分の気持ちの変化みたいなところが,この半年間,すごく起こったのかなというふうに思いました。
その後,教員 B から大学時代の経験に思い至った経緯について質問が出た。
A:振り返りに意味がないと思ってるのは,もしかして私だけなのではっていうふうに思った瞬間があって。[…]きちんと取り組んでいる児童の方が多数派で。私の目から見える振り返りの意味のなさと,児童の方から見たらちょっときっと違う風に見えてるんだろうなって思って。[…]児童の感覚と私の感覚ってずれてるのではって思ったっていうのが,大きいのかなと思いました。
さらに,児童と教員 A の感覚のずれをどのように感じるかと教員 B から尋ねられ,次のように語った。
A:なんかよくないことだとは思わないというか。[…]ずれがあるなあっていうことに気付くまでが,なんか必要なことだったかなっていう感覚で今はいます。なんかこう必要だったプロセスだなっていう。はい。なんかよかったなという気持ちではいます。
そして,最後にまとめとして次のように述べている。
A:ありがとうございました。本当にすごく素敵な先生方に色々なことを教えていただける場 で,とても本当にとにかくありがたく,本当に勉強させて頂けたことをすごく良かったなという気持ちが率直な気持ちなんです。すごくなんか自分自身何をしたらいいんだろうっていうことだったりとか,なんかこう日頃悩んでることとか,そういうことに対する答えとか,ヒントみたいなものを,他の先生の発表のところからもですし,E 先生(第一筆者),F 先 生(第二筆者)のコメントとか,そういうところからもすごくたくさんのヒントいただいて。この場があったから,次じゃあこんな事してみようっていうか,[…]こんなことしてみたらいいかもって,こうすごく前向きになれる場で本当にすごく支えていただいた場だったなと思って本当にありがたく思っています。ありがとうございました。
横溝(2009)は,「他の人が作成したシラバスや教授法を鵜呑みにして そのまま適用していくような受け身的な存在ではなく,自分自身で自分の学習者に合った教材や教室活動を創造していく能動的な存在」を「自己研修型教師」と呼んでいる。教員 A の語りからは,「自己研修型教師」のモデルとしての役割を教員 B•C が果たしていたと推察される。
教員 A の QOL に関する評価を明らかにするため,SEIQoL-DW を用い,半構造化面接による個別イ
ンタビューを 2022 年 12 月と 2023 年 4 月に実施した。また,それらの結果をもとに,教員 A の変容
についてより詳細に把握するため,EP を振り返る個別インタビューを 2023 年 8 月に実施した。 SEIQoL-DW を用いた 2 回の個別インタビューにおいて,教員 A が教員生活上で重要とした領域の名称,領域の重要度,満足度は,次の通りである(表 5•6)。index が 60.74 から 67.89 に,授業に関する満足度も 52 から 72 へと向上した。また,一緒に働く同僚に関する領域の重要度が 0.08 から 0.31へと変化した。
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次に,SEIQOL-DW の結果をもとに行った EP の振り返り(個別インタビュー)における教員 A の語りを示す。まず,教員 A に表 5•6 を示し,感じたことを尋ねたところ,「すごいしっくりくるというか,だいぶ前のことであるんですけど。そういうこと考えてたなあっていう気がするので,こうだったなあっていう気持ちです」との返答があった。重みが最も大きく変化した「同僚との関係性」については,次のようなエピソードが語られた。
A:一つ思い当たるのは,[…]外のことなんですけど。一緒に働いてる先生に,授業の前にこういうことしようと思ってるとかいう話をしなきゃいけない。ちょっと,時には面倒と思ってたんですけど。自分が考えてることを[…]言語化することによって,なんかもしかし
たら授業とか,もっとよりよくしやすいんじゃないかっていうふうに[…](学校外で交流があった団体の職員から)コメントをもらって。[…]ポジティブに捉え始めたところが多分きっかけで。
「場合によっては,同じ授業でも 3 人別の方とすると,3 回同じことを説明するってなってきて,ちょっとしんどいです」とも述べており,連携しなければならない相手の多さや時間の捻出の難しさ等は,これまでの専科教員が感じる課題(例えば,俣野•泉,2022)とも共通している。その後,実際に ALT に自分の考えを説明した際,そのよさを感じ,一緒に指導できることはメリットかもしれないと思うようになったという。また,自身がパズルとして探究していた振り返りについても「(同僚に)どうしたらいいかなみたいな話とか,そういう相談とかができるようになってきて。で,自分の考えが深まるなって思うようになってきて」と当時の様子が語られた。また,満足度において最も変化が見られた「授業」については,次のような声が聞かれた。
A:授業についてより考えられるようになった。[…]とりあえずこなす状態から,もうちょっと自分で考えたりとか, いろいろ教えていただいたりして。[…]ちょっと満足度が上がるというか。自分でもやってて意味が感じられることが増えたかなっていうところで,レベルが上がったのかなと思います。[…]自分の中での納得感みたいなものが変わったかなと思います。
さらに,第一筆者が,教えてもらったという点について尋ねると,次のような返答があった。
A:EP の中で他の先生方が,今この単元でこういうことしてるとかっていうお話とか,具体的にどういうことをされてるのかっていうお話を伺って,昔の,指導書だけ見てイメージがあんまりわからないままやってたのが,こういうこともできるんだとか,ちょっと真似してみようかなとか,そういう具体的な,周りの一緒にさせていただいた先生方の探究の様子とか伺いながら,こういうことに取り組まれているんだなとか。そういうのがすごくヒントになったなと。とても勉強になって,そこがすごく大きかったなと思います。
また,普段一緒に働く同僚からも同じようにヒントを得るようなことがあるかを尋ねた。
A:一緒に働いている ALT は,[…]ベテランの先生と一緒に授業してるところもあるので,そこからいろいろ教えてもらうこともあったんですけど。すごく何て言うんですかね,ロールモデルというか,すごくなんか本当素晴らしい実践ばっかりをされている先生方の話を聞けたので,本当に勉強させていただいてっていうようなことができたのは,このEP の方で。普段の一緒にされてる方と話すのは,やっぱりこうなんかどうしたらいいんだろうねみたいなのを,こう一緒に同じようなところでもがいてる感じだったんですけど。あ,こういうところがゴールにあるんだなみたいな。[…]それで積み上げて,あ,そうされるんだっていう[…]道具持ってる,なんかそういう存在だったかなと思って。
教員 A の語りからは,職場の同僚と EP における同僚とはまた異なる存在であることが示唆され, EP における同僚はロールモデルとしての役割を果たしていたことが明らかになった。本 EP では,専科教員という同じ立場の教員同士ならではの対話から,専門家の学びの共同体(佐藤,2015)が構築され,視点の共有や理解の深まりが生まれたと考えられる。最後に,EP 全体の振り返りとして次のような思いが語られた。
A:ある程度常に考えてる一つの軸というか,そういうことが,ここでパズルを設定したことによってできたので,振り返りについて考える時間も増えたし,すごく。[…]いろいろアドバイスとかいろいろいただいたことで,やっぱり自分の中でもすごく考え変わったなと思うのが一つあるんですけど。それと同時に,一緒に EP に参加していて,例えば,スモールトークだったりとか,あと発表のことだったりとか,他の先生が取り組まれているパズルに関してもすごく考えることも増えたし,そこについても自分の知識とか考えとかが深まったなと思っていて。そこがすごく,自分のパズルだけじゃなくて,[…]他についても深められたなあっていうのがすごく印象的だったかなと思ってます。
また,EP を通じた理解については,次のような声が聞かれた。
A: EP に取り組む前は,[…]深めたいなと思いつつ,こうちょっと置いていたところだったんですけど。この EP で,最初(パズルを)設定して,[…]チャットに打ち込んだりとかする以外の時,授業の時とか,準備してる時とかそういう時,私ずっと,こう頭の片隅にあって,やっぱり考えてることだったので。ちょっとずつ考え方も変わったり,そうですね,だいぶ深まって。[…]納得感を持って今年(2023 年度)に入ってから取り組めるようになった。振り返りに関して,自分の中で意味を感じながらできるようになったかなと思ってるんですけど。それは,EP で設定してからだなあっていうふうに思って,本当。
本研究では,4 名の小学校外国語教育の指導者を対象に約半年に渡る ICT を活用した EP を試み,研究課題「ICT を活用した EP は,小学校外国語指導者にどのような影響を与えるのか」について検討した。協力者の語りや QOL の評価からは,本 EP が自身のパズルに対する理解の深まりや教員の生活の質の向上に影響を与えたことが示唆された。EP の探究の過程やメンバーとの対話は,初任外国語専科教員 A の変容を促し,小学校外国語専科教員の成長を促す一つの手法としての可能性が示唆された。ICT を活用することで,遠隔地の教員同士が同期•非同期で情報を共有したり,意見を交換したりすることが可能になり,校内に同じ立場の同僚がいない場合が多い専科教員同士の共同体の構築にも有効であると考えられる。なお,本 EP の運用形態やメンバー構成等は,どの現場でもすぐにとり入れられるものではないため,現時点で,本 EP を一般化することは意図していない。しかしながら,本 EP おける協力者同士の対話や QOL の分析を通じ,協力者の変容の過程やそれを支える仕組みを検
証することで,教員の成長に資する教員研修の在り方について一定の示唆を得ることができたと考える。一方で,個別インタビューにて,教員 A より Google Chat をもっと活用すればよかったとの声が聞かれた。活用に抵抗があったかを尋ねたところ,Google Chat(無料版)の機能上の都合で一度文字を送信してしまうと消すことができないことにより,毎回下書きをしてから送信していたことがわかり,Chat 活用を妨げる要因の一つとなっていたことが明らかになった。俣野•泉(2023)では,有料の Slack を使用していたが,費用負担が無い方がより多くの現場で実施可能性を高めると考え,本 EPでは無料版の Google Chat を使用した。しかしながら,それによって,記述による内省の機会やメンバー同士の対話の機会が制限されることにつながった可能性も考えられる。また,児童の個人情報等に配慮した上で,メンバー同士が ICT を活用して実際の授業動画等を共有することができる場合は,それらをもとに対話が深まることも予想される。今後,どのような方法を用いることがより有効であり,教員の成長を促すかについては,さらに多角的な視点からの検討が必要であると考える。
本研究では,学級担任となっていない学級において外国語教育を担当している指導者(専科教師,授業交換で同学年他学級•異学年他学級を指導している学級担任,教務などを含む)を総称して
「専科教員」と呼ぶ。
SEIQoL-DW(a Direct Weighting procedure for Quality of Life Domains)において,「満足度」の値は, 5 本の棒を用い,それぞれの棒が垂直に何 mm の長さかを 0~100 の範囲で求める。「重要度」の値は,専用ディスクの 0~100 の目盛りから読み取り,100 で割って算出される。例えば,5 つのうちの 1 つの領域に関する「満足度」を 65,「重要度」を 0.95 とした場合,「満足度」×「重要度」は,65×0.95=61.75 となる。回答者が挙げた全 5 領域の「満足度」と「重要度」の積の和が QOL値(SEIQoL-DW index)として算出される。詳しくは, SEIQoL-DW 日本語版事務局および SEIQoL-DW 日本語版ユーザー会(2013)を参照されたい。
本研究は,第 23 回小学校英語教育学会近畿•京都大会にて口答発表した内容を加筆修正したもの
である。本研究に多大なるご協力をいただいた 4 名の先生方に心からの感謝の意を表する。なお,本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項はない。
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