2022 年 22 巻 01 号 p. 166-181
CLIL の研究をする際には,海外ばかりではなく日本の過去の良き実践例にも目を向ける必要がある。 本研究では,明治時代の小学校用国定英語教科書と現代の文部科学省検定済外国語科教科書(小学校 6 年生向け)について,各教科書に占める CLIL の割合,科目内容(社会・算数・理科および実技教科) や CLIL に関わる具体的トピック,使用されている文法や語彙,子どもの思考を深める工夫の視点か ら比較・考察を行う。研究の結果,数量的な分析からは,CLIL の割合は 110 年前の教科書においても 既に 2 割程度あり,現代の教科書にも見劣りしないこと,取り入れられている科目内容においては, 社会科内容に偏る現代の教科書よりもバランスが良いことが分かった。社会科,算数および理科の事 例研究からは,イラストの多用やオーセンティックな場面設定では共通点があるが,使用されている 文法や語彙では明治時代の教科書の方がレベルは高いことが明らかとなった。とりわけ算数の事例の 比較では,明治時代の教科書の方がより考えさせる計算で児童の発達段階にも合ったものであった。 以上の考察から,本稿では,CLIL を取り入れる際には過去から学ぶべき点も多いことを提案する。