経済学論集
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Print ISSN : 0022-9768
論文
コンドルセ─平等と貧困のアンチノミーを超えて
野原 慎司
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2022 年 83 巻 2-3 号 p. 2-16

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抄録

フランス革命期,平等の達成が理想とされたこともあり,それ以前から課題化していた貧困はますます放置できない問題となっていた.他方で,コンドルセが影響を受けたチュルゴやスミスの経済学は不平等を社会の経済的繁栄にとって不可分とした.フランス革命期の平等の重視は経済学にどのような影響を与えたのか.それを知ることは,王侯貴族が支配し,政治的・経済的不平等が大きく,なおかつ身分制が存続していたアンシャン・レジーム(旧体制)から,フランス革命期にどのような経済言説上の転換が行われたのかを知ることに通じる.

マリー・ジャン・アントワーヌ・ニコラ・ド・カリタ・コンドルセ(Marie Jean Antoine Nicolas de Caritat, marquis de Condorcet, 1743-1794年)は,啓蒙主義を代表する思想家である.啓蒙主義者の多くはアンシャン・レジーム期に著述を行い,その時期の政治・社会・経済体制の影響を受けているが,コンドルセも例外ではない.同時に,コンドルセは,フランス革命期を生きた人物でもあり,コンドルセの経済観をとらえることで,フランス革命前後での言説の変化を知ることができる.

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