経済学論集
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論文
  • ─1970年代における方法的内省の再考─
    佐藤 方宣
    2024 年 84 巻 1 号 p. 2-21
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/04/08
    ジャーナル フリー

    1970年代の日本では,近代経済学者たちの間で方法論的基礎についての反省(内省)が広がった.そこには同時期のアメリカのラディカルズの異議申し立てとの共通点と相違点が見出だせる.後に佐和隆光はこの動向を「日本のラディカルズ」と呼び,アメリカのラディカルズが経済学の価値前提を問うたのに対し,日本のそれは方法論的反省に留まったと評した.本稿はこの佐和の「日本のラディカルズ」という視角を補助線に用い,1970年代日本での方法論的内省という議論空間の成立について検討し,当時の議論には狭義の方法論に留まらない経済学の価値前提への問いや新たな「公正」の探求もまた見いだせたことを明らかにした.

  • 岩井 信幸, 万木 孝雄
    2024 年 84 巻 1 号 p. 22-50
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/04/08
    ジャーナル フリー

    協同組合をはじめとする非株式会社組織に関する経済理論モデルに基づいた議論は日本において多くはなく,それら組織の理論的解明が求められて久しい(小野澤 2017,2021).近代経済学における協同組合の理論研究はWard(1958)に始まり,労働者管理企業(LMF)や労働者協同組合など労働力を提供する人達によって所有される組織を,おもな研究対象として発展してきた.

    そして近年では,協同組合をはじめパートナーシップ,非営利企業,相互所有企業,行政機関などの非株式会社組織が株式会社に比して効率的となる環境を分析する研究,またはそれらの組織による株式会社とは異なる役割に焦点を当てた研究も,顕著に現れるようになった.それらの多くはHansmann(1996)に触発されたものであり,Grossman and Hart(1986),Hart and Moore(1990)らによって構築された不完備契約に基づく財産権理論等による組織の経済学アプローチに依拠している.

    本稿ではLMFに関する理論研究および組織の経済学における非株式会社組織研究を俯瞰するとともに,Hart and Moore(1996,1998),Bubb and Kaufman(2013)を中心に,利用者所有企業に関する理論モデルにおける仮定およびそこから導かれる帰結について解説を試みる.また,これら理論モデルの意義,および日本の協同組合や相互所有企業に対する示唆について考察を行う.

  • ─ 日米の実証研究に基づく考察 ─
    杜 雪菲
    2024 年 84 巻 1 号 p. 51-78
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/04/08
    ジャーナル フリー

    本論文では,株式投資家の会計情報選択と処理に関する日米の実証研究をサーベイする.まずは,情報処理キャパシティが制約される中で,投資家がいかに価値の高い情報を選択して優先的に処理するかを考察する.その上で,投資家の情報選択と処理が企業の株価形成に与える影響を分析する.最後に,企業経営者が投資家の情報選択と処理を意識して,情報開示と経営活動を戦略的に行うことの実証的証拠を紹介する.本論文のサーベイを通じて,投資家がすべての情報を処理することができず,一部の情報だけを処理対象として選択することを考慮した上で,会計情報が証券市場と企業行動にもたらす影響を論じることの必要性を示す.

書評
書評特集 川出良枝著『平和の追求:18世紀フランスのコスモポリタニズム』をめぐって
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