抄録
高知県下においては,第3セクターの設立,民間資本による林業会社の設立,森林組合への作業隊の併設などにより,若年労働者を確保・育成しようという試みがなされている。それらの多くは,高性能機械を使った作業体系を採用し,公務員に準じた待遇という従来みられた方向性をとっている。一方で,ある程度の高賃金を保証し,その後,素材生産業者として独立させることを目標に林業労働者の育成に取り組んでいる事業体も存在する。また,従来の公務員に準じた待遇を人材確保の戦略としていた事業体の中にも,事業展開の進展とともに,従業員の労働の動機付けとしてそのような方向性をとるものもみられ始めている。これらにみられる方向性は,若年林業労働力の確保・育成の新しい方向として評価できる。しかし,現状ではそれらの事業体がまったく助成措置を受けずにその事業経営をさらに発展させていくことは容易でなく,なんらかの形でそれらの事業体の発展を促進していく必要がある。