林業経済研究
Online ISSN : 2424-2454
Print ISSN : 0285-1598
中国山村における郷鎮企業再編の現状と今後の方向 : 河南省固始県南部の山村C鎮の事例を中心に
孔 祥旭
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 49 巻 3 号 p. 11-20

詳細
抄録

中国農山村の経済成長の大きな原動力となってきた郷鎮企業は,近年,厳しい市場競争に直面する中で再編期に入っている。本稿では河南省固始県南部山村C鎮の事例を取り上げ,山村郷鎮企業の変貌について1990年代半ば以降を中心として明らかにし,今後の方向を検討しようとした。C鎮では中国の計画経済体制から市場経済への転換に伴い,郷鎮企業の形態が大きく変化する。1979〜1980年代末は所有と経営の未分化段階,1990〜1990年代半ばは請負制度の導入による経営責任の明確化段階を経て,1990年代半ば以降は経営責任に加え,所有権の明確化も追求されている。そして,それとともに山村農業産業化を促進するという方向で郷鎮企業の再編が展開してきた。こうした再編過程の中で,企業の形態面で集団所有権の内部株式制,外部資本との連携,株式合作制の普及などの主な方式を通して,集団企業が私営企業や個人経営等への転換に伴い,私企業的性格を持った企業が郷鎮企業の主体となっている。それらの企業のうち成功しているのは,地元資源との結合を重視し,山村の特徴を利用した農業産業化を目指す郷鎮企業である。従って,所有と経営の明確化による企業の独立性の確保,農家との連携による地元の特徴ある資源の利用,地域外部の企業との連携による資金・ノウハウ等の獲得や外部企業経営者あるいは都市部企業の経験者の起用が企業の発展の要件となっている。今後の山村郷鎮企業を発展させるためには,必要な資金支援,外部の企業との連携の強化,地元の経営における人材育成等の総合的対策が益々重要となってくるものと考えられる。

著者関連情報
© 2003 林業経済学会
前の記事 次の記事
feedback
Top