林業経済研究
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2008~2013年における農林家の再生産過程の変化
2013年「林業経営統計調査報告」分析
根津 基和
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2016 年 62 巻 3 号 p. 13-20

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抄録
本稿は,2013年「林業経営統計調査報告」を分析し,農民的林業(農家林家)論の視点から考察することを目的とする。その背景は,一方では林業解体から山村解体という厳しい状況にありながら,他方において自伐林家論の登場や,中小規模林業層では固定資本を形成し,家族労働力投下,農林複合的補完で活動していることがあげられる。本稿の意義は,解体論と農民的林業(農家林家)論との統合的視座の確立にある。分析手法は,マルクス経済学の労働価値説に基づき,2013年「林業経営統計調査報告」を中心として不変資本(c),可変資本(v),計算上の剰余価値(m)に分割し,経時的・共時的に分析を行った。その結果,林業解体から山村解体,山村解体の深化へと進行していると考えられる。しかし,中小規模経営層には家族労働賃金評価額(v2)に展望が見られる。また,500ha以上経営層には凋落が見受けられることを見出した。そこに,農民的林業の展望の余地がある。地帯構成分析からは,関東・東山に2013年において経営状態に改善が見られた他,西日本型の地帯構成優位の性格が見てとれた。特に後者は,西日本の自伐林業が盛んである下地とも考えられる。
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© 2016 林業経済学会
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