林業経済研究
Online ISSN : 2424-2454
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在村者・不在村者の森林管理行動の地域性
伝統林業地と新興林業地の比較分析
芳賀 大地 片野 洋平
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2020 年 66 巻 3 号 p. 1-15

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抄録

本研究は,林業の歴史的展開が異なる2地域において,在村者と不在村者を統一的な観点から比較し森林所有者の森林管理行動の影響要因を明らかにすると共に,地域林業の展開過程が現在の地域間の影響要因の差異に与えた影響を明らかにすることを目的とする。対象地域は伝統林業地である鳥取県智頭町と,新興林業地である鳥取県日南町とした。影響要因の解明はアンケート調査から各町の在村者・不在村者を対象に4標本をそれぞれ回帰モデル分析し,地域間差異の解明は文献調査を行い,次の結果を得た。人工林面積と人工林の場所の認知は4標本全てで森林管理行動に影響し,登記の有無も日南町の不在村者以外では影響すると示唆された。人工林面積は在村者よりも不在村者において,日南町よりも智頭町においてより影響が強いと考えられた。また,4標本のうち日南町の不在村者は他の3標本とやや違う要因が影響していた。智頭町は人工林林業の歴史が長く林業への認識が在村・不在村で類似しているが,日南町では1950年代以降に人工林林業が発展し,間伐材生産が増大したのが2000年代以降であるため,不在村者の林業への認識が他と異なり,影響要因の差となった可能性がある。

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© 2020 林業経済学会
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