林業経済研究
Online ISSN : 2424-2454
Print ISSN : 0285-1598
素材生産事業体の経営リスクの特定と評価
尾分 達也 佐藤 宣子
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2020 年 66 巻 3 号 p. 40-50

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抄録

林業を取り巻く環境が年々変化する中で,素材生産事業体が安定した経営を行うために,経営リスクの把握は重要である。本研究では,素材生産事業体の経営リスクについて,リスクマネジメントの観点から,リスクの特定とリスクの評価を行った。リスクは5つのカテゴリーに分けられ,細分化された9つに特定された。宮崎県,大分県,熊本県の民間 の素材生産事業体に具体的な名称で9つのリスクの発現頻度と影響度をアンケート調査で尋ねた。その結果,発現頻度は低いものの,経営への影響度が大きい「死亡事故」,発現頻度が低く,影響度が中程度の「現場の未確保」,発現頻度は高いが,影響度は低い「機械の故障」,発現頻度,影響度ともに中程度であったその他のリスクに分けることができた。「死亡事故」は発現を起こさないこと,「機械の故障」は発現頻度を抑えることで,経営への影響を低くすることが可能だといえる。「現場の未確保」は,発現すると事業体の業務が停止してしまうため,既に発現抑制が取られているリスクだと示唆された。その他6つのリスクは,事業体が制御可能な「内的リスク」と制御不可能な「外的リスク」を考慮したリスク対応が必要だと示唆された。

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© 2020 林業経済学会
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