抄録
日本統治下の台湾について,日本帝国の「南進」における台湾の位置付けという観点から,台湾林政の推移を検討するとともに,台湾総督府の林業試験研究機関における試験研究の検討を通じて,帝国林業における森林管理の一端を明らかにした。日本統治下の台湾林政においては,初期の樟脳事業とそれに関連した奥山の森林管理,ならびに林野調査において,日本の林政とは大きく異なる部分がある一方で,中期に始まった森林計画事業に示されるように保続林業の理念に基づく森林管理を柱としている点で日本本土と共通する部分もあることが明らかとなった。一方,「南進」における台湾の位置付けという点においては,「南支南洋」との経済的なつながりを進めるという台湾総督府の方針に基づいて進められた中国南部福建省における樟脳事業の展開と台湾島内の先住民居住域における森林資源政策の間に密接な関わりがあること,林業試験場などの林業試験研究機関において台湾の地理的特徴をいかして南方の熱帯地域における森林資源の開発に向けた研究を行っていたことが明らかとなった。