日本女性骨盤底医学会誌
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当院における腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)後の腹圧性尿失禁の増悪を予防する試み
仙波 恵樹兒玉 尚志野村 奈南佐藤 優季加藤 俊平甲斐 一華占部 智花岡 美生平田 英司関根 仁樹
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2022 年 18 巻 1 号 p. 33-38

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抄録

当院では2017 年から腹腔鏡下仙骨腟固定術(laparoscopic sacrocolpopexy: LSC)を導入し、2019 年3 月までに実施した7 例において高率にde novo SUI(stress urinary incontinence)を発症した。その原因は子宮頸部および前腟壁に固定したメッシュの張力(メッシュテンション)が過剰であり、尿道の屈曲が過度に直線化されることが原因と考えた。今回、綿棒を用いて尿道の角度を計測する方法(modified Q tip Test; mQT)を考案し、これに基づいてメッシュテンションを調節することで術後に増悪するSUI やde novo SUI を予防できるか検討した。当院で2019 年5 月から11 月まで施行したLSC6 例において子宮頸部および前腟壁を頭側に牽引する際に外尿道口に綿棒を挿入し、綿棒の水平からの角度を0 ~+30°かつ全腟長が5cm 以上になるようにメッシュテンションを調節した。mQT 導入前の7 例(conventional 群)とmQT 導入後の6 例(mQT 群)において術前と術後 3 ヶ月でInternational Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form(ICIQ-SF)およびProlapse QOL questionnaire(P-QOL)日本語暫定版を取得し、これらを比較した。conventional 群において術前後のICIQ-SF score は4.6 ± 5.3(以下、平均値± SD)→8.0 ± 6.2 と増悪傾向であったが、mQT 群では6.3 ± 5.3 →4.0 ± 3.7 と改善していた。conventional 群で術前にSUI を認めた1 例中1 例で症状が持続、術前にSUI のない6 例中4 例でde novo SUI を認めたが、mQT 群では術前にSUI を認めた4 例中2 例で症状が消失、術前にSUI を認めなかった2 例中1 例でde novo SUI を認めた。mQT 導入により尿失禁症状が改善傾向にあり、本法に基づくメッシュテンションの調節がSUI の改善に寄与する可能性が示唆された。

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© 2022 日本女性骨盤底医学会
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