日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: G07
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T2 森林科学における森林教育研究の意義と課題
大学演習林がつくる子ども向け野外教育プログラム
*芦原 誠一松元 正美野下 治巳内原 浩之松野 嘉昭井之上 俊治井倉 洋二
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抄録
1.はじめに  教育研究施設である大学演習林に近年あらたに加えられたキーワードが「環境教育」である。多様な自然環境を有する森林は、森林環境教育の舞台として重要な場のひとつであり、教育プログラムの開発と指導者養成が急務であるとされている。 これについて鹿児島大学演習林では地域貢献の一環として、さらに小学生を対象とした森林教育プログラムを研究開発することを念頭に、小学校の先生と共同してプログラム開発を進めている。本報告では人気メニューの「川の源流探検」について紹介する。2.「川の源流探険」のねらいと内容 このプログラムは、川をさかのぼり、川の始まりを見るというものである。ねらいは次の3つである。 (1) 川の中を歩いて川の自然と水の営みを体感する (2) 川の始まりを見て水の循環を知る (3) 険しい難所を協力して乗り越える冒険体験           ((導入)) まず指導者はスタート地点で川の中に子ども達を立たせて目を閉じさせ『水の旅』の話をする。足もとを流れる川の水になって下っていくところを想像させ、田畑や家畜、生活用水として使われ、海に注ぎ込んでやがて雨となり森に帰ってくる。この雨はどうなったのか?それを見に行こう!と水の循環をイメージさせながら活動の目的を伝える。プログラムの重要な導入部分であると同時に、「川の水=命を育む水」として日常生活との関連性を忘れさせないというねらいもある。         ((冒険・協力)) ほとんどの小学生にとって川歩きは初めての体験である。スタート直後の水の冷たさ、足もとをすくう川の流れをまず体感する。途中には難所がいくつもあるが、指導者は手を貸さず、子ども達が班の中でお互いに協力して助け合うことが課題のひとつでもある。ゴールまでには大半の子どもが全身びしょぬれになってしまうがそれは貴重な経験である。         ((風景・水の味)) 湧水点が2カ所あり、ひとつは苔むしたシラスの崖から小さな滝が高さ1m幅50mに渡ってわき出している「水のカーテン」。もうひとつは、洞窟の中から大量の水がわき出す「川の始まり」である。ここで湧水を味わい水道水との違いを実感する。        ((ふりかえり・共有)) 活動の終了後は班単位でふりかえりをする。新しく発見したことや感じたことなどを1人ずつ発表してもらい、全員で共有する。指導者は『水の旅』(水の循環)を思い出させ、下流の汚れの原因は?どうすればよいのか?などと問いかける。導入とふりかえりを効果的に行うことにより、「川の源流探検」はより深みのある体験学習となる。3.まとめ 鹿児島大学演習林では、このような子どもを対象とした森林教育プログラムの研究開発と、指導者養成を目的とした様々な活動を行っている。ここでは代表的な例を紹介したが、このようなプログラムでは班単位で指導者がつくために、1回に5,6人の指導者が必要となる。これを演習林の職員だけでなく、指導者養成プログラムをかねて学生に指導させることを試行している。 今後は小中学校教員や少年自然の家、森林管理署、県の農林事務所など、演習林を中心とした広範囲の協力体制を構築し、その中で指導者の養成と教育プログラムの開発・実践が行われることが、地域社会がつくる「森林教育」の理想の姿ではないかと考えている。今後も実践とアンケート調査の分析をすすめ、プログラムのさらなる充実をはかっていきたい。
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© 2003 日本林学会
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