日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: N03
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森林内で発するざわめき音の発生メカニズム
風によって発生する樹木のざわめき音の分析
*勝又 邦弘近藤 稔山田 容三
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抄録
本研究は,森林の保険休養効果という観点から森林のサウンドスケープを構成する主要要素である,風などによって樹木がそよぐ際に発生するざわめき音についてその特徴を把握することを目的とした。ざわめき音の分析対象の樹種に広葉樹7種(アカメモチ,アラカシ,クスノキ,シイノキ,ソヨゴ,モチノキ)と針葉樹3種(アカマツ,スギ,ヒノキ)を選んだ。音の収録は__丸1__自然風により発生する音を録音する方法,__丸2__枝を振って強制的に音を発生させる方法の屋外測定と,1m程度の大きさの枝を採取してスタンドに固定し,__丸3__扇風機により強弱4段階の人工風を当てて発生させる方法の室内実験により行った。いずれの収録もデジタルビデオカメラ(S社製DCR-TRV50)を用い,録音モード16 bit/48 kHzステレオとした。録音した音のざわめき音と暗騒音とをパソコンに取込み,音声ファイルをY電子社製スペクトル分析ソフト(リアルタイムアナライザーRAE)に入力してスペクトル分析,1/3オクターブ分析,自己相関関数分析を行った。自然風によって発生したコナラ,クスノキ,スギ,ヒノキの音の大きなざわめき音の1/3オクターブ分析結果と自己相関関数分析の結果からコナラ,クスノキのざわめき音は4000__から__5000Hzの周波数であるのに対し,スギ,ヒノキは1000Hz前後の比較的低い周波数であると推定された。また,自然風による平均的な大きさのざわめき音のコナラとスギのパワースペクトル分析から,人の聴覚で聞きとり易い1kHz__から__8kHzの領域では,コナラ,クスノキいずれもパワースペクトルは周波数fに反比例する傾向を示したのに対し,スギ,ヒノキではf2に反比例する傾向を示した。人工風によるざわめき音の1/3オクターブ分析においても広葉樹は,樹種によって異なるものの自然風と同様に風速の増加にともない4000__から__6000Hz周辺に音圧レベルが増加する傾向がみられた。しかし,針葉樹は3種とも使用した扇風機の風力(1.0__から__4.5m/s)ではざわめき音を発生させることはできなかった。 今回測定対象とした常緑樹を主とした広葉樹のざわめき音は,5000Hz周辺の高い周波数であること,また,1/fゆらぎの性質を有することから人間にとって心地よい音であることが,他方,針葉樹のざわめき音は広葉樹と対照的に1000Hz前後の低い周波数成分で,1/f2ゆらぎとどちらかというと心を不安にする性質を有することが示唆された。
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© 2003 日本林学会
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