日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: N25
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防災
都市林におけるCO2固定量の年々変動
*太田 岳史村石 保田中 隆文檜山 哲哉小林 菜花子
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抄録
本研究では,都市二次林を対象として夜間CO2フラックスの補正の必要性の有無を検討した.その結果から都市二次林でのCO2固定量の年々変動を検討する. 夜間の値を見ると,摩擦速度が小さな値を示している場合,樹冠上の大気へ放出されるCO2フラックスの値が小さくなる傾向にある.これは,夜間の安定時に土壌呼吸などによって放出されたCO2が,大気が安定しているために樹冠層を通して放出されず,林間内に貯留されている可能性があることを示唆している.また,このような安定状態が現れた翌朝に特別大きな大気側へ放出されるCO2フラックスも見られない.これは,貯留されていたCO2が水平方向の移流によって対象林分から流防しことを示唆している. 摩擦速度を0.05msec-1ごとに区分し,気温とCO2フラックスの相関関係を3ヶ月毎に調べた.そして,気温とCO2フラックスの間に相関がなくなる摩擦速度を限界摩擦速度とし,限界摩擦速度以下の時は限界摩擦速度以上で得られた同時期の気温とCO2フラックスの関係より安定時CO2フラックスを補正した. 補正を行ったことにより固定量は補正前の52-58%にまで減少する.また,年毎の補正量を見ると,2000年夏期に大きな値となった.これは,当年は風の弱い夜が多く,大気が安定状態になった時間帯が長いためである.秋期,冬期には年による補正量の大きな相違はなかった. 各地で計測されている年間炭素固定量の値は,南ヨーロッパでの-6.6(tC・ha-1・yr-1)からシベリアでの-2.1(tC・ha-1・yr-1)程度である.また,我が国では川越市で-3.6(tC・ha-1・yr-1),苫小牧で-2.7(tC・ha-1・yr-1)程度が報告されている.本試験地は都市林であるが炭素固定量という点から見ると,既往の研究例と大きな相違はない. しかし,補正の有無,また補正の方法により炭素固定量は大きく変化するため,今後も安定したCO2フラックス計測手法の確立が必要である.
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© 2003 日本林学会
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